ロシアがガス供給止めて親ロ派地域で暖房停止 モルドバへの圧力裏目
ロシアが1日、旧ソ連構成国のモルドバへの天然ガス供給を停止したところ、同国内で親ロシア系住民の分離独立派が支配する「沿ドニエストル」地域の住宅で暖房が止まる事態になった。別ルートでも供給できるが、ロシアがモルドバとの債務問題を理由に拒否。一方でモルドバ政府の支配地域は、現時点では問題ないとみられ、ガスを使ったロシアの圧力が裏目に出た形だ。 【写真】「脱ロシア」モルドバワインの挑戦 柔らかい味わいに宿る歴史の風味 沿ドニエストルのエネルギー会社が住民に出した通知によると、1日午前に暖房や調理向けのガス供給が停止し、ガスの栓を閉めるように求めている。供給再開の時期は書かれていない。 沿ドニエストルの住民は「朝からお茶も沸かせなくなった」と嘆いている。英紙ガーディアンによると、同社は住民に、「暖かい服を着て、家族が一つの部屋に集まり、窓やベランダのドアに毛布や厚手のカーテンを掛け、電気ヒーターを利用する」よう呼びかけているという。 ロシアはウクライナ経由で沿ドニエストルに年間約20億立方メートルの天然ガスを供給してきたが、ウクライナが通過契約を延長せず、1日に供給が止まった。 ■モルドバ政府に「巨額の債務」支払いを要求 代替ルートでの供給も可能だが、ロシア側は、モルドバのガス料金支払いが滞り、7億9千万ドル(約1250億円)の債務があると主張。ルート変更前の支払いを求めている。一方、モルドバ側は、債務の額は大幅に少ないと主張して対立しており、供給再開のめどはたっていない。 モルドバはエネルギーが不足する事態に備え、昨年12月半ばから60日間の非常事態を宣言したが、当面はルーマニアなどからのガスや電気の供給で乗り切れるとしている。 2022年2月のウクライナ侵攻後、ロシアは侵攻を批判するモルドバ政府との関係が悪化。ガスを使って圧力をかけてきたが、今回は親ロ派地域の住民が被害を受ける皮肉な事態となっている。
朝日新聞社