いまから120年前、クリスマスはなぜ「世間が浮き立つ楽しげなイベント」になったのか
どんどん現在性を増すクリスマス
現在性というのは、使い捨てのお祭りの形になる。 伝統にならない。意地でも伝統にしない。 内容に意味を持たせていないから、日付にだけ意味があり、だれも本気でクリスマスを本質的に祝わない。 だから、どの年も、日本のクリスマスは一回性のものなのだ。 その年だけのもの。 繰り返されない。 クリスマスの新書を書いてあと、それに付いて話すと、「え、クリスマスって、そんな昔からあるんですか」という反応がじつに多かった。 それが日本のクリスマスに関するすべてだろう。 今年のその日に何をするかには興味があるが、それしか興味がない。 一回性でしかない。 クリスマスが恋人たちの日とされたのは1980年代の前半からであるが、これは「とにかく恋人たちの楽しい日を作りたい」という1980年代らしい(後半が土地高騰バブル好景気でおおはしゃぎする年代らしい)要請であったことがわかる。 一回性が特質だということは、実はいまの時代にこそ合っているように見える。 クリスマスは年を取らない。 クリスマスはどんどん現在性を増しているように見える。 【こちらも読む】「クリスマスはかうして祝いませう」昭和初期の面白マニュアル
堀井 憲一郎(コラムニスト)