記録的な円ショート、痛みを伴う反発リスク高まる
(ブルームバーグ): 円は対ドルで反発するリスクが高まっている。円安に賭けるトレーダーのポジションが過去最高水準に達しているためだ。
中東情勢の緊迫化と、日本が円を買い支えるために市場介入を行うかもしれないとの臆測が、投資家にいわゆるキャリートレードを解消するよう圧力をかけている。キャリートレードは、円のような低金利の通貨を借り入れて利回りの高い資産で運用する取引だ。
レバレッジドファンドとアセットマネジャーによる円の売り越しは4月16日時点で17万3000枚を超え、米商品先物取引委員会(CFTC)のデータがさかのぼれる2006年以降の最大となった。ブルームバーグの集計によると、円のショートポジションは主要9通貨の中でも最大で、円は反発に対して特に脆弱(ぜいじゃく)な通貨になっている。
多くの投資家が一つの通貨のポジションを積み増すことのリスクは、今月のメキシコペソの急落に表れている。メキシコペソは投資家がキャリートレードで積み上がった買いポジションの解消に動いたことで大きく値下がりした。日本と米国の大きな利回り格差を背景に円は先週、対ドルで約34年ぶりの安値を記録し、日本の通貨当局は為替市場で行動を取る可能性があると警告した。
マーケット・リスク・アドバイザリーの深谷幸司フェローは、米国の利下げも日本の追加利上げも先とみられ、「政策不変の安心感からドル買い・円売りが高水準に積み上がっている」とリポートで指摘。「ドル安・円高に振れるとすれば、米景気への懸念が指標で明確になる、ないし介入が実施される、リスクイベントが生じ市場のボラティリティーが高まる、株価がさらに下落してリスク回避が強まる、といった事態だ」と予想した。
ドルが上昇を続ける中、日米韓の財務相は先週、為替市場の動向について引き続き緊密に協議していくとの共同声明を発表。最近の急激な通貨安に対する日韓の深刻な懸念を認識しているとも記した。