初代アウディ A7スポーツバックはメルセデス・ベンツCLSへの強烈なカウンターパンチだった【10年ひと昔の新車】
4ドアクーペはもはやニッチ市場ではなく激戦の舞台になりつつある
試乗を終えての感想は、A7スポーツバックは最近のアウディに見られる安定した高性能と高品質、そして魅力的なデザインと精緻な仕上げを持ったクルマであるということだった。となると、来年末には登場するであろうA6、そしてA6アバントとの関係が気になってくる。 そこで、マーケティング担当に「カニバリズムへの心配」について質問を投げかけてみた。すると、待っていました、とばかりに「ある程度の競合関係になるかも知れません。しかし成長を重視する我々は、内側の心配をするよりも外側への積極的な効果を目指しています」という答えが返ってきた。 勢いに乗って成長を続けるアウディにとってA7スポーツバックは単なるニッチモデルではなく、拡販のための重要な戦略モデルなのである。それゆえにアウディ内のモデル間におけるカニバリズムなど覚悟の上であり、全体の台数が伸びれば使命を果たしたことになるのだ。 車種を増やしたことに起因するコスト増については、共通モジュールシステムの採用による部品の共有化、生産コスト革命が解決するということだ。 コスタ・スメルダの澄んだ海辺にたたずむA7スポーツバックは、たしかに自信に満ち溢れていた。しかし、その波打ち際にはフルモデルチェンジを受けたメルセデス・ベンツCLS、そして沖合にはBMWグランクーペも迫ってきている。 A7スポーツバックは先攻によって得たアドバンテージを守りきることができるのだろうか。ニッチと呼ばれて比較的安泰だったこのセグメントも、今や激しい戦いの場になろうとしている。(文:木村好宏/写真:Kimura Office)
アウディ A7 スポーツバック 3.0TFSI クワトロ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4969×1911×1420mm ●ホイールベース:2914mm ●車両重量:1785kg ●エンジン:V6DOHCスーパーチャージャー ●排気量:2995cc ●最高出力:220kW(300ps)/5250-6500rpm ●最大トルク:440Nm/2900-4500rpm ●トランスミッション:7速DCT(Sトロニック) ●駆動方式:4WD ●最高速:250km/h (リミッター) ●0→100km/h加速:5.6秒 ※EU準拠
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