【解説】愛子さま「ことばの力」で周囲を笑顔に 宮内庁担当記者が見た1年「気負わず、自分らしく」
新入社員は「分からないことばかりなので」
就職にあたって寄せられた文書には、公務と仕事の両立について「大変な面もあるかもしれません」と少し不安も覗かされていた。 週に3回ほどの出勤という当初の予想を超え、ほぼ毎日出勤された愛子さま。「一日も早く職場に慣れ、なるべく早くお役に立てるようになりたい」という一心だったという。 新入社員として毎日が必死な中で、4月下旬には初めて「園遊会」に出席された。 「緊張しております」と率直に明かされていたが、園遊会デビューの愛子さまの姿を楽しみに来場した招待客も多く、卒業や就職へのお祝いを言われる度に「ありがとうございます」「分からないことばかりなので」と初対面の相手とことばを交わしながら、徐々に緊張も和らいでいかれたようだった。 俳優の北大路欣也さんとは15年ぶりの再会を喜び、美術家の横尾忠則さんとは猫談義で話が弾んでいた。
「心も熱くなって」”ことばの力”が緊張をほどいていく
10月に初めてお一人で地方公務に臨んだ際にも、二日間の滞在中に愛子さまのことばによって場の空気がふわっと柔らかくなる場面を何度も目にした。 佐賀空港に到着された際、出迎える知事や自治体関係者も緊張していた様子だったが、愛子さまがにこにこと「緊張しております」と明かされると一気に和やかな空気に包まれた。 また、観戦された国民スポーツ大会の競技会場では、汗ばむ陽気だったことから、出迎えた初対面の大会関係者に「心も熱くなって」とユーモアを交えて挨拶されると柔らかな笑いが広がった。 会場到着というある意味形式的でもあるような場面が、愛子さまの何げないひと言で温かい交流となり、取材する記者にとっては報道したい大切な場面に変わる。 愛子さまは予定には無い、その場その場で感じたことを、気負わず、自分らしく、とても適切なことばで相手に伝えられる。すると場が和やかになり、「ことばの力」でご自身の緊張もほぐれていくように感じた。 その「ことばの力」の源は、豊富な読書によって培われた語彙力と、両陛下譲りのユーモアのセンスなのではないかと拝察する。 社会人として仕事を覚えながら、初めての公務にも取り組まれることは決して容易では無かったと思う。それでも初めての行事に自然体で臨みながら、温かい交流をひとつひとつ積み重ね、「公務と仕事の両立」という大きな課題を自らの「ことばの力」でクリアされた、そんな1年だったように思う。