まるで漫画家の“分身”が絵を出力? 話題の「ピュアモデルAI」とは何か、開発元にインタビュー
漫画制作における「著作権」の問題
近年、画像生成AIは著しく機能が向上しており、画像生成AIで制作した「AIタレント」や「AIキャラクター」を商用利用する事例も増えている。一方で、それが膨大なデータを事前学習させた基盤モデルの画像生成AIで出力したタレントやキャラクターだった場合、著作権侵害になる可能性があるとHa氏は言う。 ┌────────── 世の中の著作物や実在する人物の写真を学習させたAIを出力の基盤にしている場合、特定の著作物や人物に類似した絵柄が生成されることもあるでしょう。その場合、著作権違反になる可能性が高いです。また、特定の著作権者や人物の特徴がない絵柄であっても、それが制作者の著作物として認められるかも微妙なところです(Ha氏) └──────────
生成AIを活用した作品に著作権が認められるかどうかの判断基準は、「創作意図」と「創作寄与」があるか、となる。現状、商用利用されている事例は制作過程が公開されていないものが多く、「傍目では判断できない」のが実情のようだ。
縦スクロール漫画「WEBTOON」を制作するエンドルフィンのチャン氏は、「漫画制作におけるAI活用への世間の反感」にも触れた。 ┌────────── 当社のピュアモデルAIは著作権をきっちりと守る仕様になっていますが、それでも感情論として『漫画の制作にAIを使っていいのか』という声は韓国や日本、その他の国でも聞かれます(チャン氏) └────────── 韓国では、過去にある企業が基盤モデルを出力に使用してWEBTOONの作品を制作した際、世間から猛反発があったという。該当作品は漫画家が一から制作し直したそうだ。そういった背景があり、著作権を侵害せず、作品の命が失われることもなく、世間にも受け入れてもらえる方法を追求したのがピュアモデルAIとなる。
まずはBtoBで事業拡大を目指す
大御所漫画家の里中満智子氏、倉田よしみ氏、韓国人漫画家の金童話(キム・ドンファ)氏などの協力を得て、十分に実務に利用できる技術水準に達しているピュアモデルAI。 すでに作品制作サービスを提供しているが、コストの負担を考え、現状は出版社やWEBTOON関連企業などBtoBでの事業拡大を図っているという。将来的にSaaSでのリリースも検討しているが、複雑性を伴うサービスで慎重に扱う必要があり、漫画家が自分自身でサービスを操作する方法を研究中だという。さらに、漫画制作のAI活用における世間の納得を得ることも求められる。