ボーイング1万7000人削減の衝撃! 「B777X」も完成延期で、ストライキ1兆円損失で泣きっ面に蜂! 一体どこへ向かうのか?
すでに納品待ち
「ボーイングがだめならエアバスで」 といきたいところであるが、エアバスは旺盛な需要を受けていっぱいいっぱいの状態だ。直近では、中国の航空機リース会社が80機のA320Neoを発注したことが明らかになっているが、最初の納入は2030年とのことだ。また、フィリピンのセブパシフィック航空は、70機のA321Neoを発注している。 日本航空機開発協会による主要民間輸送機の受注・納入状況によると、2024年9月末現在における残高は、 ・B737MAXシリーズ:5184機 ・A320シリーズ:2980機 ・A321シリーズ:4692機 となっている(出典は日本航空機開発協会)。B737MAXシリーズとA320・A321シリーズは、今現在需要が最も高い座席数200席前後の、近・中距離旅客機であり、ボーイング、エアバスいずれにとっても“稼ぎ頭”といっていい。A320・A321シリーズの2023年の納入機数を見ると、 ・A320シリーズ:247機 ・A321シリーズ:317機 であり(同出典)、残を解消するには単純計算で 「10年以上」 かかることがわかる。もちろん、エアバスは2026年までにA320ファミリーの生産を1か月あたり75機に増やすとしている。しかしながら、エンジンなどサプライヤーの生産能力次第で未達となる可能性が残されているのが気になるところだ。
安全を最優先する文化の醸成を祈るのみ
ボーイングは、2024年8月にデビッド・カルフーン氏からケリー・オルトバーグ氏に最高経営責任者(CEO)を交代している。2020年にCEOに就任したカルフーン氏により、経営の立て直しを行っていたが、2024年1月に発生したB737MAXの非常扉脱落などの品質トラブルを受けて退任することとなった。 つまるところ、カルフーン氏では 「安全性や品質管理よりもスピード重視で飛行機を生産してきた」 ボーイングの長年の文化を変えることができなかった。航空宇宙産業で35年以上の経験があるオルトバーグ氏の手腕に期待するところである。しかしながら、就任するやいなやストライキ問題が持ち上がり厳しい船出となったといえよう。 ボーイングの現状は、非常にもったいない気がしてならない。引き続き航空機需要は高いと見られており、商機がないわけではないからだ。目の前においしい料理があるにもかかわらず、箸を使いこなせないため食べられないようなものだろう。 安全を最優先する文化は、突然発生するものでも与えられるものでなく、経営者と従業員が時間をかけて積み上げていくものだ。オルトバーグCEOのもとで、過去の反省から安全を軽視することなく、地道に歩み続けることを期待するのみである。
小田坂真理雄(国際トラフィックライター)