【インタビュー】ソフトバンク・石川柊太 巡り合わせのノーヒットノーラン「9回の雰囲気は、やっぱりいつもとは違う。でも“後押し”なんで」
いつもより楽な気持ちで
最後の打者・中村剛也の打球は一塁線へ。一塁手・中村晃[写真左]がつかんで自ら一塁ベースを踏み、記録達成!
久しぶりに見せる満面の笑みだった。8月18日のPayPayドームで西武打線をピシャリと封じ込め、NPB史上88人目、99度目となる記録達成。球場が歓喜に沸いた瞬間から一夜明け、あらためて右腕は喜びの声を聞かせてくれた。 取材・構成=菅原梨恵 写真=湯浅芳昭 石川柊太らしい、テンポのいい投球だった。そして、それは最後まで途切れることはなかった。8月18日の西武戦(PayPayドーム)、9回127球、与四死球は4あったが、ヒットはゼロ。仲間の、ファンの祝福を受けた右腕は、誰よりも輝く、この日の主役だった。 ──一夜明けて、今朝はいつもと違う、というようなことはありましたか。 石川 先発したあとは基本、寝付けないんですよね。だから目覚めって言っても、そもそもほとんど寝てない。そこは、いつもどおりでした。 ──記録達成後の記者会見では「実感が湧いていないと言えば湧いていない」と言っていました。今は? 石川 やっぱりたくさんお祝いの連絡をもらったりすると、湧きましたね。すごいことをやれた、というか、やらせていただいた。いろいろなことがかみ合って起きたことなんです。自分の実力だけじゃない部分もある。だからもう本当に、いろいろと感謝しかないですね。 ──石川投手に以前お話を聞いたとき、まず試合に入るときには完全試合、ノーヒットノーランを目指して、そこから1本打たれたら次は完封、といったように逆算をしていく、ということを言われていました。その考え方は今も変わらず? 石川 ヒットを打たれないようにというのは根本的にありますし、そこは変わらないんじゃないかなと思いますね。 ──そういう意識の下でマウンドに上がる中で、実際にノーヒットノーランを達成した。実現して、いかがですか。 石川 どうなんですかね。やっているとき、試合で投げているときは、本当に一歩ずつ進んでいるイメージなので。振り返ることもないんです。進むだけ。 ──それはノーヒットノーランの試合だからというわけではなく、普段の試合、例えば打たれたときも振り返らず? 石川 基本的にはそうです。抑えているときほど、振り返らずいける。打たれると、どうしても引きずったり、落ち込んだり。そっちのほうが、やっぱりマインドコントロールが難しいですよね。 ──では、メンタルの部分では、いつもより今回のほうがスムーズに行けた、と。 石川 結果的に自分の中で、この球は良くない、とかはありました。今の逆球だったな、とか。そういうストレスはあったんですけど、不運なヒットだったり、試合の中で一喜一憂する状況はあまりなかった。そういった意味では、メンタル的にはすごく楽というか、スムーズには行けました。 ──ノーヒットノーランのほうが気持ち的に楽というのは不思議な感じですね。 石川 “打たれていない”ので、楽っちゃ楽ですよ(笑)。打たれたときのほうがしんどくないですか。だから、いつもより何も考えずに投げられていました。 ──8月18日の試合前、試合に入るにあたっての入り方、配球の組み立てといったところは、甲斐拓也捕手とどんな話をしていたのでしょうか。 石川 まずは自分のいいところを、ちゃんと消さずに。カーブやストレートを投げ込んでいくのが、僕のスタイル。それがまず前提としてあって、あとは・・・
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週刊ベースボール