奄美移住初日の日記など展示 島尾敏雄企画展始まる 県立奄美図書館
奄美ゆかりの作家・島尾敏雄の企画展「島尾敏雄と『南島』」が26日から、鹿児島県奄美市名瀬の県立奄美図書館の島尾敏雄記念室で開かれている。小説家として名をはせ、奄美移住後に同館の前身である県立図書館奄美分館の初代館長も務めた島尾が、船で名瀬に降り立った初日の日記や小説の草稿などが展示され、島尾を身近に感じられる内容になっている。11月21日まで。 島尾敏雄は1917年横浜市生まれ。戦時中は海軍特攻隊長として加計呂麻島に赴任し、後に妻となるミホと知り合った。戦後は三島由紀夫、庄野潤三らと同人雑誌「光耀」を創刊、文壇へ躍り出た。 55年10月に旧名瀬市に移住。高校の非常勤講師を経て、58年4月に同分館の初代館長に就任。75年4月に指宿市に転居するまでの間、現在まで活動が受け継がれる「奄美郷土研究会」や読書会「島にて」を立ち上げるなど、奄美の文化振興に貢献。群島内の他の島での読書の普及にも努めた。島での生活をつづったエッセー「名瀬だより」は文芸雑誌「新日本文学」に連載された。
企画展では11月2日に同館で講演を行う追手門学院大学の西尾宣明教授の島尾敏雄に関する著書や、島尾の小説からイメージして描かれた絵画も展示。絵画は「島にて」の会長を務めた故大野榮三郎氏の妻ミエさんが描いたもので、今年3月に同館に寄贈した。 同館の小林由香指導主事は「奄美に居住していたからこそ書かれた文学もたくさんある。多くの方に島尾敏雄氏を知ってほしい」と来場を呼び掛けた。