エミン・ユルマズさん「損を取り返そうとしてはいけない」…投資の世界から静かに退場していく人たちの共通点
投資で資産を増やすにはどうしたらいいのか。エコノミストのエミン・ユルマズさんと、東大卒プロポーカープレーヤーの木原直哉さんの著書『「確率思考」で市場を制する最強の投資術』(KADOKAWA)から、マーケットとの向き合い方を紹介する――。 【この記事の画像を見る】 ■「理不尽な負け」は必ず訪れる 株とポーカーの共通点:正しい行動をしても報われないことがある 【エミン】ポーカーでは勝つ確率が最も高いプレーをしても、たまたま確率が低いことが起こって負けることがあります。しかも、そんな不運が何度も続くことも少なくありません。要はスランプというものが誰にでもあって、木原さんのような世界トップレベルのスキルを持っていても、負け続ける時期があるはずです。そこをどう耐えるかもスキルのひとつだと思いますが、これは株も同じなんですよね。 リーマンショックなんてその最たる例で、投資家のスキルや行動にまったく関係ない理由で株価が暴落しました。今だって、エヌビディアやネットフリックスのようなスター銘柄の株価が、将来半値以下になったり、9割下がったりする局面が来ないとは言い切れません。 株価が10倍になってもおかしくないと確信できる銘柄であれば、それが信じられる限り保有し続ければいいわけですが、テンバガーというゴールに到達するまでには、それなりの試練があります。 どんな優良企業でも、マクロ環境で逆風が吹いていれば株価は下落しますし、外部環境に問題がなくても一時的な要因で損失を出すこともあります。株価が成長する銘柄ほど、ボラティリティは大きく、それに耐える精神的なコストを支払わなければならないのです。 ■正しい行動で負けることは仕方がない 最近であれば、ニトリホールディングス(9843)ですね。同社は上場前から36期連続、1989年の上場後33期連続となる増収増益記録を達成しており、ポーカーでいえばエーシーズ(Aが2枚のハンド)のような超優良企業です。しかし、2024年3月期の決算で連続記録は途絶えてしまいました。 海外で製造した商品を日本で売るビジネスモデルである以上、急激な円安が進行していた環境下ではどう頑張っても業績は伸ばせないからでした。手元に強いハンドが来たのに、場に開いた3枚のカードとはまったくかみ合わなくて戦えない状態のようなものですね。 【木原】そもそも、参加したゲームに必ず勝たないといけないわけじゃない。裏目に出るゲームがあるのは当然で、いちいちくよくよしていたら身が持たないですよ。正しい行動をして負けてもそれは仕方がないことで、それでも期待値が最大になる確率的に正しいプレーを続けていれば、長期的には勝てます。