監督批判問題の鹿島・金崎が決勝ゴールに込めた思いとは
雄叫びをあげ、右手で何度もガッツポーズを作りながら、鹿島アントラーズのFW金崎夢生がチームカラーの深紅に染まった敵地のゴール裏との距離を縮めていく。 味方にとっては頼りになる、そして対戦相手にとっては厄介極まりないその背中を見つめながら、鹿島のDF昌子源はエースの胸中を慮っていた。 「いつもは何かケツからスライディングするような、ようわからん喜び方をするのに。サポーターのところへ行くなんて、ホントによう見られん。相当嬉しかったんとちゃうかな」 23日に行われたJリーグチャンピオンシップ準決勝。鹿島は川崎フロンターレのホーム・等々力陸上競技場に乗り込み、一発勝負の90分間に臨んだ。年間総合順位で3位の鹿島に対して、川崎は2位。90分間を終えて同点の場合は、規定により上位である後者が浦和レッズの待つ決勝へと駒を進める。 果たして、前半はお互いに譲らず無得点で折り返す。迎えた後半5分。ついに均衡が破れる。引き分けでもOKの川崎守備陣が築く牙城に、風穴を開けたのは金崎だった。 左サイドで得たスローイン。FW土居聖真の折り返しを受けたDF山本脩斗が左タッチライン際でボールを収め、巧みな切り返しから相手のマークをかわした直後だった。 それまで相手ゴール前の中央、DFエドゥアルドの背後で気配を消していた金崎が、突然動き出す。目指したのはニアサイド。この瞬間、山本との間にはあうんの約束が成立していた。 「普段の練習から、ああいう形でクロスをあげるときは人を狙うよりも、ニアやファーのスペースに蹴り込むことを意識している。特にニアの場合は低く、速いボールを意識している。ムウ(金崎)の姿は見えてはいなかったけど、誰かニアへ走り込んできてくれ、と念じてクロスをあげた」 山本がこう振り返れば、エドゥアルドが反応する直前に死角から前方に飛び出し、ダイブしながら強引に捻った頭でクロスのコースを変えた金崎も以心伝心で続く。 「いいボールがあがってきたので、点で合わせたという感じで。(相手との駆け引きは)何も考えていませんでした。いいところに決まってよかったです」 お世辞にも華麗とはいえない。無骨で泥臭く、頭をヒットさせた後もボールの行方から目を離さない姿からは執念すら伝わってくる。韓国代表GKチョン・ソンリョンが必死に伸ばした左手をかすめた一撃は、ゴール右隅へゆっくり吸い込まれていった。