監督批判問題の鹿島・金崎が決勝ゴールに込めた思いとは
ポルトガル2部リーグのポルティモネンセSCから昨シーズンの開幕直前に鹿島へ期限付き移籍し、今シーズンからは完全移籍に切り替えた金崎が図らずも注目を集めたのは8月25日。W杯アジア最終予選に臨む日本代表発表の席だった。 24人を読みあげたヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、質疑応答に移る前に自ら金崎に言及。鹿島における「ある行為」が理由で、リストから外したことを明らかにした。 「日本代表候補の選手が、あのような態度を取ってはいけない」 指揮官の逆鱗に触れた光景が展開されたのは、8月20日の湘南ベルマーレとの第2ステージ第9節だった。後半25分に交代を告げられた金崎は激昂し、石井正忠監督が求めた握手を拒否。集音マイクにはこんな罵声が拾われていた。 「何で俺なんだよ!」 その後もベンチでペットボトルなどを蹴り上げ、挙げ句は石井監督と一触即発の状態になる。コーチ陣やスタッフが仲裁に入って何とか収まり、翌日にはクラブが厳重注意。金崎も指揮官及び選手たちに謝罪したが、全国のサッカーファンが注目する場でハリルホジッチ監督に蒸し返されてしまった。 批判は金崎だけでなく、謹慎などの処分を与えなかった鹿島にも集中。日本代表発表から一夜明けた8月26日からは、心労による体調不良で石井監督が一時的に休養する事態も招いてしまう。 行為そのものは、もちろん褒められるものではない。それでも、試合中に繰り広げられた前代未聞の造反劇の背景には、究極の負けず嫌いで、一度決めたら梃子でも動かない金崎の一本気な性格がある。 第1ステージを制し、復活の狼煙をあげたかに見えた鹿島だったが、金崎と並ぶ攻撃の核・カイオを中東のアルアインに引き抜かれた第2ステージでは、一転して大苦戦を強いられていた。 金崎自身も湘南戦までの第2ステージで、わずか1ゴール。チームが低迷する責任を感じていたところに、0‐0の状況で命じられた交代に思わず感情を高ぶらせてしまった。 石井監督は1試合の指揮を大岩剛コーチに任せた後に復帰したが、金崎は大騒動を引き起こした責任を感じていたのだろう。第2ステージでは結局、2ゴールをあげただけにとどまってしまう。 「力が入りすぎですよ。点を取りたい、点を取りたいといつも言っていましたから」 何度もチャンスを外し、ときには相手GKにシュートを当ててしまった金崎の姿を選手会長のDF西大伍が苦笑いで振り返れば、昌子は「今日も点を取りそうな雰囲気は正直、なかった」とこう続ける。 「それでもムウ君(金崎)が点を取れんことをわあわあ言う人はおらんし、いずれどこかのタイミングで、と思っている矢先にああやって難しいゴールを決めてくれた。言っちゃ悪いけど他の人が決めるのとムウ君が決めるのとでは全然違う。チームを一番勢いに乗せるエースが決めて、しかも勝てた。正直、感動しました」 何がなんでも勝ちたい。それも、自分のゴールで。最前線でエゴイズムをまき散らす金崎は、長くタイトルから遠ざかっていた鹿島にいつしか必要不可欠な存在と化していた。