「15分間の昼寝」+「冷たいタオル」でパフォーマンスUP【科学が証明!ストレス解消法】
【科学が証明!ストレス解消法】#198 2019年に経済協力開発機構(OECD)が公表した各国の平均睡眠時間のデータによると、日本人の平均睡眠時間は7時間22分だといいます。 「皿を洗って」よりも「皿を4枚洗って」の方が相手をやる気にさせる 7時間も確保しているわけですから十分な睡眠時間のようにも思えますが、実は調査対象の約30カ国中、最も短い結果となっています。各国を平均した睡眠時間は8時間23分で、もっとも平均睡眠時間が長かったのは南アフリカ共和国の9時間21分でした。実に、日本とは2時間も異なるため、世界各国さまざまな睡眠事情があることがうかがえます。 7時間22分という数字だけ見れば聞こえはいいですが、これは日本人の平均睡眠時間。つまり、子どもも高齢者も含まれています。実際に、国民健康・栄養調査報告(2019年)によると、40~49歳の1日の平均睡眠時間で、もっとも回答が多かったのは「5時間以上6時間未満」(36.5%)。働き盛りに限って言えば、睡眠時間は十分ではないと言えるのです。 前回の本欄で紹介したように、アルツハイマー型認知症の原因物質であるアミロイドβというタンパク質は、睡眠中に脳の血管から脳外へ排出されます。すなわち、睡眠時間が足りないと、アミロイドβが脳に蓄積され、認知症リスクが高くなってしまうのです。 効果的に睡眠を取ることは欠かせないわけですが、一方で眠気を理解することも大事でしょう。産業医学総合研究所(現・労働安全衛生総合研究所)の高橋らは、昼食後の眠気に関する研究(1998年)を発表しています。 実験では、被験者を次の3つのグループに分けました。①昼食後に15分間の昼寝をする②昼食後に45分間の昼寝をする③昼食後に昼寝をしない。その上で、①と②のグループは昼寝前、昼寝30分後と3時間後、③のグループは昼食前、昼食30分後と3時間後、それぞれ脳波を測りました。 その結果、昼寝をした①と②のグループは、30分後と3時間後ともに眠気を感じる程度が低くなり、副交感神経が優位になって、リラックスしていることが観察されたといいます。 半面、昼寝をしない③のグループは眠気が強い状態が続いたことも分かりました。この結果から、眠くなる昼食後は、仕事のやる気を上げて生産性を高めるためにも、①が示すように15分間程度の昼寝をすることを推奨します。 また、財団法人電力中央研究所ヒューマンファクター研究センターの廣瀬と長坂は、「冷たいタオルで顔をふく」ことに効果があると報告しています。 被験者に計算などの簡単な課題を50分間してもらった後、①目を閉じるだけ②目を閉じて音楽を聴くという2パターンを用意し、それぞれ15分休憩してもらいました。その上で、「冷たいタオルで顔をふく/ふかない」を調べたところ、「目を閉じるだけ+タオルで顔をふく」が最もリラックス効果があったことが分かったといいます。 十分な睡眠が確保できない場合は、「15分間昼寝+冷たいタオル」を実践してみてください。 (堀田秀吾/明治大学教授、言語学者)