高速道路走行中に扉が開き、あおり運転、遅れは当然… 「安かろう悪かろう」の米グレイハウンドバス「鉄道なにコレ!?」【番外編・下】
「走る犬」のマークは小田急バスの空港と結ぶリムジンバスでも使われているが、運行とサービスの両面で天と地ほど異なるのが米国の都市間高速バス大手、グレイハウンドだ。「片道20ドル(1ドル=148円で2960円)」とアムトラックの約7分の1のお値打ち料金に魅了されて首都ワシントンから主要都市ニューヨークまで乗車したところ3時間8分遅れ、翌日の復路も遅延が待ち受けていることは想定通りだった。旅行サイトなどでの低評価が定着し、利用者の苦情が次々と書き込まれる「安かろう悪かろう」のグレイハウンドに似つかわしく、安全運行を脅かしかねない驚愕体験が待ち受けていた…。(共同通信=大塚圭一郎) 【グレイハウンドの近年の事件・事故】報道などによると、米ロサンゼルス発サンフランシスコ行きバスの車内で2020年2月に男が銃を発砲して女性1人が死亡、5人が負傷した。21年12月に西部ユタ州を走っていたバスが高速道路で衝突事故を起こし、ほぼ全ての乗客がけがを負った。西部カリフォルニア州オロビルのグレイハウンドのバス停で22年2月、男が銃を発砲して1人が死亡、少なくとも4人が負傷した。22年8月に走行中のバスが道路から外れて柵に衝突し、少なくとも24人の乗客がけがを負った。23年7月12日には中西部イリノイ州の高速道路でバスが停車中のトレーラーに衝突して3人が死亡、少なくとも14人がけがを負った。23年8月31日にはメリーランド州でバスが道路を逆走していたスポーツタイプ多目的車(SUV)と衝突してSUVを運転していた男性が死亡、バスの乗客と運転手計17人が負傷した。
▽出発30分前に遅延予告 今年9月10日、ニューヨークのポートオーソリティー・バスターミナルに定刻30分前の午後6時20分に着いた。そのとたん、グレイハウンドから遅延を予告するテキストがスマートフォンに届き、出発予定時刻は「7:19pm」と29分遅れになっている。しかし、前日乗った3時間8分遅れのバスを30分遅れと表示し続けているサイトは信用ならない。 そこで、バスターミナルの地下1階にあるグレイハウンドの切符販売窓口の係員に尋ねると「地下2階の64番ゲートに向かってください」と言われた。ゲート前には座り込んでいる若者が何人かいたため「ここで待ちぼうけを食らうのか」と予想しながらも、職員に「ワシントン行きのバスは何時になりそうですか?」と恐る恐る質問した。 すると、「そこに止まっているので乗車券を見せてください」と予想していなかった返答が。慌ててスマホの乗車券画面を開くと職員はQRコードを読み取り、ゲートの扉を進むように指示された。割り当てられた2列目の通路側の座席に腰かけた。