高速道路走行中に扉が開き、あおり運転、遅れは当然… 「安かろう悪かろう」の米グレイハウンドバス「鉄道なにコレ!?」【番外編・下】
かなりの座席が埋まっており、「テキストの情報を信じて7時19分に着く利用者は間に合うのだろうか?」との疑問が頭をもたげた。 ▽「客層が良くなく、不審者も乗り込む」と忠告されたが… 心配は無用だった。ちょうど7時19分に最後に到着したのは往路とは別の黒人の女性運転手だった。どうやら「運転手待ち」のために生じた遅れのようで、定刻より約35分遅れてニューヨークのバスターミナルから発車した。 バスの遅れの原因は道路渋滞に加え、運転手の人手不足も響いていると聞く。新型コロナウイルス流行時の業績悪化で従業員を解雇した米企業は、コロナ禍後の経済活動回復で人手不足に陥っている。 グレイハウンドは今年4月に350人の運転手募集を発表して「契約で1万5千ドル(1ドル=148円換算で222万円)のボーナス支給」と売り込んだが、「運転手はバス運行事業者や、オンライン通信販売の普及で需要が高まっている物流会社などの間で人材獲得合戦が激化している」(米バス運行事業者幹部)とされる。
私にグレイハウンドに乗らないように忠告してくれた友人らは理由の一つとして「料金が安いので客層が良くなく、薬物中毒のような不審者も乗り込む」と指摘していた。特徴としては黒人と中南米系の利用者が多かったが、危険を感じるような人は見当たらなかった。 隣に座っていたのはフランスに住む黒人の男子大学生で「ニュージャージー州に住んでいる両親の家に来ており、米国を見学しているんだ。今日はニューヨークに行った帰りで、次の停留所の(ニュージャージー州)ニューアークで降りるんだ」と話した。隣の列にいたのは中南米系の若い姉妹だった。 ▽日本ならば苦情が出かねない“塩対応” 午後7時55分にニューアークの停留所に着くと私の隣の窓際座席にいた大学生を含めて数人が下車し、代わりに10人近くが乗車した。私の隣の座席には若い黒人女性がやって来た。 運転手はバス先端の扉の脇に立ち、スマホで予約客の乗車券のQRコードを読み取って座席番号を伝えていた。雨が降っている中で確認作業がはかどらないことにしびれを切らし、乗り込もうとした客に対しては「待ちなさいよ、まだ(乗車券を)スキャンしていないでしょ。何考えているのよ!」と怒鳴りつけていた。