高速道路走行中に扉が開き、あおり運転、遅れは当然… 「安かろう悪かろう」の米グレイハウンドバス「鉄道なにコレ!?」【番外編・下】
昨年9月に大阪発東京行きの夜行バスのエアコンが故障して京都駅で運行中止になり、乗客全員が“置き去り”にされたことを批判する声が出た。グレイハウンドでも他の路線でバスの調子が悪いために運転が打ち切りになったという旅行記を読んでいただけに、二の舞になりかねないと考えたのだ。 ▽「くそったれ!」と叫んであおり運転 私の予想に反してバスはI-95号線に入り、スピードを上げた。しばらくして恐れていた「プシュー」という音が聞こえてきた。 何度か同じ音が響き、ついに扉が開いたため運転手が路肩に止めた。運転手は「なんてことだ!」と嘆きながら扉を閉めたが、すぐ真横を別の車が走っていたら開いた扉と接触しかねない。しかもフロントガラスのワイパーは「ガタガタ」と異音を立てておかしな動きをしている。運行前点検の適切性が問われる整備不良だ。 隣の車線を走っていた白いシボレー・カマロが方向指示器を直前に出してバスの前に入ると、運転手は「このバスの前に入るんじゃないよ、くそったれ!」と叫びながらクラクションを3回鳴らし、車間距離を詰めて「あおり運転」をした。
▽ついに雨漏りまで…次に「走る犬」のバスに乗るとすれば ふと、背筋が寒いことに気づいた。高速道路を走行中に扉が開いたり、「あおり運転」をしたりする様子を目の当たりにしたりしたためではなく、天井の非常用脱出口から雨水が実際に漏れていたのだ。 扉とワイパーが壊れ、雨漏りしており、運転も荒いバスが終点のワシントン・ユニオン駅に着いたのは53分遅れの翌日午前0時38分だった。定刻ならば間に合ったワシントン首都圏交通局地下鉄の終電を逃したものの、無事に帰れただけでも幸運に思えた。 諸経費を含めてワシントン―ニューヨークの往復43・97ドル(約6510円)というバス料金に飛びついたものの、遅延にとどまらない驚天動地の経験を踏まえると“お買い得”とは評しがたい。「走る犬」を描いたバスに再び乗っても、小田急バスリムジンバスか、東京都渋谷区のコミュニティーバス「ハチ公バス」になりそうだ…。 ※「鉄道なにコレ!?」とは:鉄道と旅行が好きで、鉄道コラム「汐留鉄道倶楽部」の執筆者でもある筆者が、鉄道に関して「なにコレ!?」と驚いた体験や、意外に思われそうな話題をご紹介する連載。2019年8月に始まり、ほぼ月に1回お届けしています。ぜひご愛読ください!