音楽から映画界まで ガガら米著名人から相次ぐ“反トランプ・コール”
アメリカの人気歌手、レディー・ガガが11月9日未明にマンハッタンのトランプタワーの前で撮影した写真はインスタグラムを経由して、世界中に瞬く間に広がり、アメリカ国内外で多くの賛同を得た。選挙期間中にはロバート・デ・ニーロやアーノルド・シュワルツェネッガーといったハリウッド俳優がトランプ氏の言動や政策を公然と批判し、トランプ氏を音楽やコメディ、ユーチューブに投稿したメッセージ映像で批判する有名アーティストが多かったのも今回の大統領選挙における大きな特徴の一つだ。アーティストによるトランプ批判は選挙後も続いているが、これは単なるトレンドなのか、それともアメリカの将来を危惧する彼らの叫びなのか。 【写真】「反トランプ」に肩入れしすぎた?米メディア 自国しか見ない米国人
トランプタワーの前で「Love trumps hate」
ドナルド・トランプが大統領選挙に勝利して間もなく、全米各地ではトランプの政策や思想などに反対する市民らが一斉に抗議デモを行った。選挙戦でトランプ氏が移民やイスラム教徒、女性に対して攻撃的な発言を繰り返していたため、アメリカ社会がトランプ政権によって今以上に分断されるのではないかと危惧した市民らが、「#notmypresident(私の選んだ大統領ではない)」というハッシュタグをSNSで共有し、各都市の街頭に集結したのだ。トランプの過去の発言やこれからの政策を危惧するのは一般市民だけではない。アーティストのレディー・ガガは、トランプが勝利宣言を行う直前の9日午前2時半頃にマンハッタンにあるトランプタワーの前で、「Love trumps hate」というスローガンが書かれたプラカードを掲げた写真を撮影し、インスタグラムに投稿した。 トランプという名前は、現在もドイツ各地で見られる名前で、ドナルド・トランプの先祖となる数名のトランプ家のメンバーが19世紀にアメリカに移住するのだが、トランプ家はドイツ西部のライラント=プファルツ州で暮らしていた。現地で方言として話されるファルツ語では、トランプではなく、「ドランプ」という発音であったようだが、アメリカに移住したトランプ一族は英語に合わせてトランプという名前を選択している。余談になるが、日本でカードゲームそのものとして使われているトランプという単語は和製英語で、英語圏ではゲームの切り札となるカードを意味する。そして、トランプという言葉は動詞としても使われるのだが、この場合は「~よりも勝る」という意味になる。ガガは「愛は憎しみに勝る」というスローガンをトランプという単語を使って世界中に発信し、彼女が投稿した写真についた「いいね」の数は約40万に達した。日本ではこのフレーズが誤訳されてしまい、話題なったことも記憶に新しい。 トランプ政権誕生に対する市民の厳しい声は、トランプ本人だけではなく、マイク・ペンス次期副大統領にも向けられた。ペンスは18日夜にニューヨークのブロードウェイでロングラン上演されている人気ミュージカル「ハミルトン」を感激した際に、ペンス氏の存在に気付いた観客から一斉にブーイングを受け、舞台の進行が何度か中断される異例の事態となった。 ハミルトンはアメリカの建国史をヒップホップで表現するミュージカルで、様々な地域から集まった移民の持つパワーや多様性の素晴らしさを描いた作品だ。今年のトニー賞では最優秀ミュージカル部門を制しており、過去にはオバマ大統領やヒラリー・クリントン氏も観劇に訪れている。終演後、ハミルトンのキャストは舞台上から観客にブーイングをやめるよう訴え、劇場を離れようとしていたペンス氏に対し、「多様性によって作られてきたアメリカの価値観を尊重していただきたく思います」という声明を読み上げた。声明文はペンス氏の来場を知った作者とスタッフが限られた時間で作り上げたのだという。