音楽から映画界まで ガガら米著名人から相次ぐ“反トランプ・コール”
根底にあるのは「分裂するアメリカ」への懸念か
選挙活動中に移民やイスラム教徒、女性に対して暴言を繰り返したトランプ氏だが、大統領就任後はより現実的な国家運営を行うだろうという楽観論も存在する。選挙戦を通してアメリカ国内外で有名になった「アメリカを再び偉大にする」というスローガンの下、トランプ支持者は新政権下で中間層が拡大し格差が是正されることなどを期待しているが、アメリカ国内の景気の動向以上に社会が「不寛容さ」によって分断されるのではないかと不安視する市民も多い。米パンクロックバンド、グリーンデイは20日に行われたアメリカン・ミュージック・アワードで生演奏を披露したが、アドリブで「トランプもKKKもファシストのアメリカもいらない!」と叫び、その様子は全米に中継された。 ラッパーのコモンは2008年の大統領選挙で当時のオバマ候補を熱烈に支持していたが、大統領選挙前の11月4日にトランプのスローガンを皮肉ったタイトルの「ブラック・アメリカ・アゲイン」という最新アルバムをリリース。アメリカの政治や人種差別に対する憤りをリリックの中で表現している。アルバムに収録された「レター・トゥ・ザ・フリー」ではシンガーソングライターのビラルとアメリカ国内に現在も根強く残る人種差別について触れており、「鎖と鞭はなくなっても、今も奴隷制度は続いている。黒んぼという言葉の同義語で犯罪者という言葉が使われる」と、人種差別が背景にあるとの指摘もある警察のマイノリティに対する過度な対応について、コモンは力強くラップする。 アーティストの間でもトランプの支持派と批判派に分かれているものの、支持派は「古き良きアメリカの復活」を期待するのに対し、批判派は「アメリカ社会の分裂が加速化する」と、ある意味で全く正反対の主張を展開している点が興味深い。このような風潮はトランプ政権発足後、どう変わっていくのだろうか?
------------------------------ ■仲野博文(なかの・ひろふみ) ジャーナリスト。1975年生まれ。アメリカの大学院でジャーナリズムを学んでいた2001年に同時多発テロを経験し、卒業後そのまま現地で報道の仕事に就く。10年近い海外滞在経験を活かして、欧米を中心とする海外ニュースの取材や解説を行う。ウェブサイト