肺炎、要介護5、入院、そしてついに…認知症で退いた元東大教授が次々とたどる「険しすぎる下り坂」
ベットの上での生活
2016年 肺炎で再び入院。しかし前回の入院で、晋には病院での生活が負担になると痛感していたので、自宅での療養を選びました。抗生剤が効き前後10日ほどでデイサービスに通えるくらい回復したのは幸いでした。 こうして晋は、ベッド中心の生活になっていきました。いわゆる「寝たきり」です。言葉を失い、寝たきりになった晋。生きていて、幸せなのでしょうか。尋ねてみたいと思うこともありますが、聞くまでもない、そうも感じます。 南向きの部屋で寝ている彼のもとに、朝日がガラス戸越しに射す。そのとき彼の目は、重荷をすべて下ろしたかのように澄み切って、平穏に満ちています。その幸せそうな顔を見ていると、問うこと自体が無意味にも思えるのです。 ただ、この静けさに至るまでの道のりは、決して平坦ではありませんでした。 『「あの人は…」…デイサービスに通い始めた認知症の元東大教授を深く傷つけた「残酷すぎる一言」』へ続く
若井 克子