韓国最大規模の労組幹部は北朝鮮のスパイ、報告文で「総会長」金正恩氏に忠誠示す
【ソウル=小池和樹】北朝鮮の対韓国工作機関「文化交流局」が、韓国最大規模の労組幹部だった男らによって秘密裏に結成されたスパイ組織に対して多数の指令文を送っていたことが、韓国・水原地裁の判決で認定された。韓国の労組を通じ、日米韓3か国協力の弱体化を狙う北朝鮮の思惑が見てとれる。 【一覧】北朝鮮がスパイ組織に出した指令文の内容
北朝鮮は2019年7月から8月に3回にわたって指令文を送った。これに先立ち、日本政府は元徴用工訴訟問題への対応を巡り当時の文在寅(ムンジェイン)政権が解決に向けた対応を見せない中、対韓輸出管理強化に踏み切っていた。
指令文では「民族の利益を侵害する冒涜(ぼうとく)行為だと社会に認識させ、文政府が日本に妥協案を出さないよう力を与えろ」と求め、日本大使館を包囲したり、日の丸を破ったりするような過激な反日闘争の強化を促した。この後、韓国内では市民団体などによる日本製品の不買運動が広がった。
また保守の尹錫悦(ユンソンニョル)政権が発足した直後の22年5月の指令文は、「(尹政権が)従属的な韓米同盟にしがみつき、反北朝鮮対決策動に狂っている」と対北強硬路線への転換に危機感を示し、韓国内での「大衆闘争」で糾弾する必要があると主張した。
米軍基地画像も
スパイ組織に対しては、日米韓の協力強化が「平和と安定を害する」というメッセージの発信につながる記者会見や署名運動、抗議デモを指示。リーダー格の男が局長を務めていた労組「民主労総」は、尹政権発足後、3か国協力反対の活動を積極的に展開している。
水原地裁の判決で「北朝鮮に渡れば攻撃対象になり得るなど、韓国に不利益をもたらす危険性が明白」と強く非難したのが、この男が所持していたデータだ。ソウル南方の京畿道(キョンギド)平沢(ピョンテク)の米軍基地のヘリコプターや車両、ミサイル砲台の画像などが収められていた。