韓国最大規模の労組幹部は北朝鮮のスパイ、報告文で「総会長」金正恩氏に忠誠示す
北朝鮮の工作機関は19年1月の指令文で「有事に備えた準備を整える」とし、平沢の軍基地や軍港の配置図、「大統領府や主要統治機関をマヒさせるため」として、送電網システムの資料について入手を求めており、判決は北朝鮮の指示に従い、男がこうした情報を収集したと認定した。
「本社」「支社長」
指令文は、北朝鮮の文化交流局を「本社」、韓国のスパイ組織のリーダー格の男を「支社長」、民主労総を「営業1部」と表現。19年8月には「『本社』の指示に従い、『支社長』が『営業1部』を通じ反日感情を高めるための闘争を戦術的によく練っていると評価する」との指令文もあった。流出した場合でも、実態解明を防ぐ隠蔽(いんぺい)工作とみられる。
メールなどで送られた指令文は、別の文字や画像に内容が埋め込まれる「ステガノグラフィー」と呼ばれる暗号化手法で隠されていた。捜査機関の捜索や押収があってもやりとりが発覚しないよう備えていた。
リーダー格の男は北朝鮮に報告文を送るたび、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記を「総会長」との隠語で表現し、「いつも忠実な息子として闘争しています」(20年5月)、「我が民族の自主と平和のために努力されている総会長の領導に感服します」(同6月)とつづるなど、忠誠を示していた。
今回の事件について、韓国に亡命した北朝鮮元工作員の一人は「スパイ活動の氷山の一角が明らかになっただけ」と指摘する。韓国の裁判所では今回の事件以外にも、北朝鮮からの指令文を受け取っていたなどとして国家保安法違反に問われているスパイ事件の公判が3件行われている。