着任当初はあいさつしても無視された…全国初の民間人校長、理想を模索し「ハートわしづかみ」
そのために、民間で培った知見をフル活用した。日立から使われなくなったパソコンを譲り受け、当時は珍しかった教員に1人1台ずつを実現させた。さらに、オンライン上の共有ページを作り、教員が互いの授業の進め方を把握し、自身の授業に役立てることができるようにした。
今では全ての学校が毎年度作るようになった「学校経営計画」も同様だ。それまでの都立高校では、具体的な目標も計画も作られず、年度終了後の総括もなかった。内田さんは、各学校が計画を作り、その達成度合いを評価する仕組み作りを都教委とともに手がけた。
卒業証書を手書き
生徒にも温かく接した。卒業証書を一人一人手書きし、教室へのエアコン導入に尽力。様々なことを学ばせたいと、近隣の大学と連携して大学の講義を受けられるようにもした。
都教育監を務めた高野敬三さん(70)は「民間人校長第1号として苦労も多かったと思うが、大きな役割を果たしてくれた」と感謝する。
5年の任期を終えた時、高島高校では教員や保護者による盛大な送別会が行われた。その後も、各地で講演を重ね、教育者として発信を続けた内田さん。「新しい世界に飛び込んで、先生や生徒と心を通わせた。とても楽しかった」。今年1月の取材に、自身の挑戦をこう振り返った。
◆民間人校長=教員免許を持たない民間出身の校長。2000年4月に学校教育法施行規則が改正され、登用が可能になった。民間の経営感覚や発想を生かし、学校を活性化するのが狙い。これまで東京都では10人を採用し、2017年度末を最後に、現在は登用されていない。