「踊る大捜査線」の室井管理官はそんなにえらいのか?キャリアとノンキャリアに確執はあるの?…刑事ドラマとは違う「警察のリアル」【元事件記者が解説】
フジテレビ系列の『踊る大捜査線」が連続ドラマとして放送されたのは1997年。あれから25年以上たった今年10月、警視庁のキャリア室井慎次を主役にした映画が公開される予定です。熱烈なファンが多いこのシリーズですが、ドラマと現実はどの程度違うのかを知っておくと、より一層おもしろく映画を観れるかもしれません。今回は『三度のメシより事件が好きな元新聞記者が教える 事件報道の裏側』(東洋経済新報社)より、著者の三枝玄太郎氏が、ドラマや映画ではない「警察のリアル」を解説します。
室井管理官はそんなにえらいのか
日本では昔も今も警察ドラマや刑事映画が人気です。中でも、1997年に放映されたフジテレビ系の大人気ドラマ『踊る大捜査線』をご記憶の方は多いでしょう。映画化もされ、観客動員700万人の大ヒットを記録しました。 それまでの刑事ドラマと違い、派手な銃撃戦が出てこない一方で、主人公が上司と後輩の板挟みになったり、大きな組織に翻弄されたりするペーソスが、世のサラリーマンたちの心をつかんだのもヒットの要因ではないでしょうか。 私も家族で映画館に足を運びましたし、舞台のモデルといわれている東京水上警察署(現東京湾岸警察署)で開催された交通安全運動に「スリーアミーゴス」神田総一朗署長役の北村総一朗さん、秋山晴海副署長役の斎藤暁さん、袴田健吾刑事課長役の小野武彦さんが出演した際には、取材と称して駆けつけ、ちゃっかり御三方から記者メモ帳にサインを頂いたりしたものです。 さて、『踊る~』の重要な役どころとして、柳葉敏郎さん演じる室井慎次管理官という人物が出てきます。スリーアミーゴスら警察署の幹部たちは、ことあるごとに室井管理官にペコペコお愛想を繰り返すので、「ふうん、室井管理官はえらいんだ」と思った人も多いでしょう。ただ私はこれには若干、違和感を覚えました。 そう感じたのは私が当時まさに警視庁担当だったからでしょう。ここからは、事件記者が見た、ドラマや映画もかくやという警察のリアルをお話ししていきたいと思います。きっと事件ニュースが何倍も身近に感じられるはずです。 結論から言えば、室井管理官は袴田刑事課長よりはえらいですが、神田署長や秋山副署長よりは階級は下です。これには、警察ならではの組織構造が関係しています。 捜査一課を例にとると、トップに課長がいて、ナンバー2に理事官、補佐役として3~4人の管理官、管理官の下に10人以上の係長と、ピラミッド式の組織になっています。警察は基本的に「ごく少数のキャリア組」と「大多数のノンキャリア組」でできている組織ですので、管理官以下はほとんどノンキャリアで構成されます。