不朽の名作「ぐりとぐら」の魅力とは?『こどものとも』 編集部が選ぶ名場面3選【追悼|児童文学作家・中川李枝子さん】
『ぐりとぐら』あらすじ
お料理することと食べることが何より好きな野ねずみのぐりとぐらは、森で大きな卵を見つけました。目玉焼きにしようか卵焼きにしようか考えたすえ、カステラを作ることにしました。でも、卵があまり大きくて運べません。そこでフライパンをもってきて、その場で料理することにしました。カステラを焼くにおいにつられて、森じゅうの動物たちも集まってきます……。(福音館書店『ぐりとぐら』特設サイトより)
1976年発売『ぐりとぐらのかいすいよく』より「流れ着いたぶどう酒の瓶を2匹が観察しているシーン」
「瓶に手紙を入れて海へ流して、それを誰かが拾って読む」という「ボトルメール」にロマンを感じ、このシーンを選びました。海に物を流すのは、実際にはもうやってはいけないこととは思いますが、「もし自分が受け取ったらどう感じるだろう」などお話の世界の中で想像すると嬉しい気持ちになります。 コルクの栓がなかなか抜けず、手近にあった先の尖った貝殻を使って開けているのがとても賢くて可愛らしくないですか? 『ぐりとぐら』シリーズ全般を通して、2匹の生活には「ある物を活かす」創意工夫や生活の知恵が溢れています。(『こどものとも』編集長 関根さん)
『ぐりとぐらのかいすいよく』あらすじ
ぐりとぐらが浜辺で遊んでいると、沖からぶどう酒の空き瓶が流れてきました。栓を開けてみると、中には「しんじゅとうだいへきてください」という、うみぼうずからの手紙が入っていました。ぐりとぐらが、浮き袋をつけてうみぼうずの島までたどりつくと、うみぼうずは灯台の真珠のランプを穴に落としてこまっていました。ぐりとぐらは穴に入って真珠をもちかえりました。うみぼうずはお礼に、いろいろな泳ぎ方を教えてくれるのでした。(福音館書店『ぐりとぐら』特設サイトより)
2000年発売『ぐりとぐらとすみれちゃん』より「ピクニックシートにかぼちゃ料理を並べてみんなで食べるシーン」
このお話に登場する「すみれちゃん」は、病気のため4歳で亡くなられた『ぐりとぐら』が大好きだった女の子をモデルにしていて、シリーズで唯一“等身大の人間”が登場します。「すみれちゃんに絵本の中で楽しい時間を過ごして欲しい」という思いから、中川さんはこのお話を書きました。美味しそうなお料理を食べている動物たちの中に、人間の女の子が1人いても何の違和感もないですよね。みんな笑顔です。 かぼちゃ料理のバリエーションの多さも注目ポイントで、かぼちゃの“ぺちゃぺちゃ煮”や“ぺたぺた焼き”をはじめ、プリン、かりんとう、ドーナッツなど、何種類ものメニューが並べられています。 「かぼちゃ1つでこんなにバラエティに富んだお料理がつくれるのね」という気づきがあり、「かぼちゃの蒸しパンもできたら美味しそう」などとかぼちゃ料理のイメージが膨らむのも大人が楽しめるポイントだと思い、このシーンを選びました。(『こどものとも』編集長 関根さん)