「歩く肺炎」マイコプラズマ感染症―今後日本で流行の可能性も
新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行してから約半年がたちました。世の中が徐々に新型コロナウイルス感染症流行前の状態に戻りつつあるなかで、コロナ禍で減っていた感染症も元に戻りつつあります。たとえばインフルエンザ感染症は、2020年に日本で新型コロナウイルス感染症が流行拡大してから感染者は大幅に減りましたが、2023年には夏頃から流行が始まり、学級閉鎖も相次いでいます。 コロナ禍で減った感染症の1つにマイコプラズマ感染症があります。毎年のように流行していましたが、2020年以降はほとんど患者さんがいなくなりました。しかし現在、米国、中国、デンマーク、フランス、オランダなどではマイコプラズマ感染症の増加が報告されています。コロナ禍でしばらく流行しなかったために、マイコプラズマに対する免疫を持っていない人が増えた結果、ひとたび流行すると一気に拡大する可能性があります。肺炎になり、入院することもまれではありません。一見、元気そうにしていてもX線検査で肺炎と判明することもあり、マイコプラズマは「歩く肺炎」とも呼ばれています。マイコプラズマに感染しないようにするために私たちはどのようなことに気を付け、どのようなときにマイコプラズマ感染症を考えればよいのでしょうか。【藤沢市民病院 臨床検査科・清水博之/メディカルノートNEWS & JOURNAL】
◇頑固なせきの原因は?
普段とても元気な8才の男の子Aくん。先週から軽いせきをしていることにお母さんは気が付いていました。Aくんは至って元気で、学校から帰ったらすぐに友達の家に遊びに行き、食欲も旺盛だったので、お母さんは特に気にしていませんでした。しかし今週になってから、だんだん湿ったせきに変わってきて、昨日から熱が出てきました。Aくんは頭が痛いといって、今朝からぐったりしています。せきもさらに悪化しているようです。お母さんはAくんを近くの小児科に連れて行きました。 小児科ではまず、新型コロナウイルス、インフルエンザウイルスの検査をしましたが、結果は陰性でした。小児科の先生は胸に聴診器を当てて呼吸の音を聴いたところ、少し雑音があると言いました。すぐにX線検査をしたところ、肺炎を起こしていることが分かりました。 小児科の先生は、マイコプラズマ肺炎の可能性があると言って、抗菌薬を処方してくれました。水分もしっかり取って安静にしていたら、2日後には熱が下がりました。