なぜ南葛SCは風間八宏監督を招聘できたのか? 岩本義弘GMが描くクラブの未来図<RS of the Year 2023>
失敗も一つのストーリーに
――“23区初”のスタジアム建設についても、2023年2月に予定地が決まり、葛飾区は土地の現所有者とも協定を結び終えましたが、日本サッカーにとって大きなイノベーションだと思います。 岩本:新しいJ1基準を満たしたスタジアム建設に関しては、高橋先生自身も10数年前からずっと目指してきていたものだし、もう一つカテゴリーが上がると葛飾区内では試合ができなくなってしまうので(JFLは天然芝グラウンドでの試合開催が義務づけられており、葛飾区内には現状、天然芝施設が一つもないため)、まずは一つ話が進んですごくうれしいし、安心しています。 新国立競技場や味の素フィールド西が丘があるとはいえ、国の持ち物であるスタジアムで毎試合ホームゲームをするわけにはいかないですし、スポーツビジネスという観点から見ても、きちんと収益化できるスタジアムをつくっていかなければいけない。 今回、サッカースタジアムの建設が決まったのは、これまでの地道な努力に加えて、最後は運みたいな部分もあり、建設までのハードルの高さは、この国で競技の発展を目指すうえでの大きな課題だとあらためて感じました。 なので、単純に自分たちが使える場所をつくるというだけではなく、サッカー界全体にとっていい前例になれるようなスタジアムにしていきたいと思っています。 ――最後に、南葛SCがサッカー界、スポーツ界で前例のないことにチャレンジし続けているのは、なぜなのでしょうか。 岩本:われわれがやっているクラブ経営は、ホームゲームの運営をはじめ、日本のクラブではやっていないけれど海外ではやっていることも、Jリーグのトップクラブはやっているけれど地域クラブではやっていないということも、「前例がないからやめましょう」ということは一切ありません。カテゴリーとか、サッカーの実力だけにとらわれずに面白いことをやっていきたいですよね。 最終的には、そのクラブがどこを目指してやっているか、でしかない。そういう意味では、「ワクワクを生み出す」ために、今やっていることが正解になると信じています。今後もそういうことをやり続けながら、ファン・サポーター、クラブパートナーの方たちと共に少しずつ。失敗も一つのストーリーとして歩んでいきたいです。 <了>
[PROFILE] 岩本義弘(いわもと・よしひろ) 1972年7月24日生まれ。東京都出身。Jリーグを目指すサッカークラブ「南葛SC」の代表取締役専務兼GM(ゼネラルマネージャー)を務める。オールスポーツWebメディア『REAL SPORTS』編集長、株式会社TSUBASA代表取締役としては『キャプテン翼』のライツ業務全般を担当。またサッカー解説者やスポーツジャーナリストとしても活動している。前職は株式会社フロムワン代表取締役兼サッカーキング統括編集長。
インタビュー=北健一郎