なぜ南葛SCは風間八宏監督を招聘できたのか? 岩本義弘GMが描くクラブの未来図<RS of the Year 2023>
監督、育成、そして海外展開へ
――そんななか、新監督に風間八宏さんを招聘(しょうへい)したのは率直に言って驚きました。オファーをした理由や就任までの経緯をぜひ聞かせてください。 岩本:南葛SCとしては、キャプテン翼の軸であり、高橋先生も大事にしている「ボールはともだち」をキーワードに、そのサッカーを体現できる人を常に探していました。そしてそこに一番に振り切っているのが風間さん。 スペイン人など海外の監督も含めて検討もしましたが、誰よりもうまくできるのは誰かと考えたら、風間さんしかいない。であれば、だめもとでもよいからオファーをしてみようと。 僕も風間さんとは20年くらいの付き合いの仲なので、早速アポイントをとって、風間さんのお母さまが営んでいる居酒屋「八宏の店まる八」で会うことに。しばらく話したあとに、「真剣に監督のオファーの話をしにきました」と切り出しました。 名古屋グランパスを辞めてから、監督業の依頼はたくさんきたけど、すぐに断っていたとも話していたので、さすがに難しいかなと思ったのですが……。 ――結果的には監督だけでなく、テクニカルダイレクターとして育成も含めて南葛SCに携わるかたちになりましたね。 岩本:監督については、即答では断られず「『キャプテン翼』はずるいよなぁ」と。そこから、アカデミーとトップチームが繋がるようなクラブづくりをしたいという話や、海外からも指導のオファーが来ているという話を風間さんがしていたので、「監督とテクニカルダイレクター、そして海外展開もキャプテン翼アカデミーとして一緒にやりませんか?」と大きく3つまとめての提案をさせてもらいました。 最初はもちろんそこまでの話をするつもりはなかったですけど、風間さんのメソッドがすばらしいことは一緒に本も作ってきたので重々わかっているし、その時以上に言語化できている部分もあるはず。そのノウハウを『キャプテン翼』で輸出していくことは作品にとっても大きな意味があるし、世界のサッカーを漫画だけじゃなく、リアルでも変えていくことができるんじゃないかなと感じました。 ――ただ、風間さんは日本でもトップクラスの監督ですし、当然かなりのコストがかかることになりますよね? 岩本:そうですね。風間さんが今まで受けてきたオファーとは比べ物にならないほど低い金額にはなってしまいますけど、クラブとしては大きな投資です。無い袖を振るわけにはいかないので、3週間くらいの間にパートナー企業の方から追加で出資してくれる先を探したあと、改めて別の場所で高橋先生も一緒に同席してもらって。うちとして出せる金額をしっかりと示したうえで、了承の返事をいただくことができました。