パリ五輪出場のフェンシング世界王者江村美咲さん 二つの日本勢「初メダル」に挑む
7月26日に開幕するパリ五輪で、前人未到の偉業に挑もうとしているフェンシング選手の江村美咲さん。個人種目で日本唯一の現役世界チャンピオンだ。フェンシング3種目のうち五輪メダルと唯一縁がない「サーブル」に光をあてた「サラブレッド」は、パリ五輪でサーブル、女子とも日本勢初のメダリストとして名を刻めるか。 【写真】 試合で相手選手を攻める江村美咲さん
日本女子初の世界チャンピオンに
フェンシングの競技用ピストが30面もある。日本代表チームの練習風景は壮観だ。東京都北区の味の素ナショナルトレーニングセンター・イースト棟3階。パリ五輪をめざす精鋭が剣を交える。 騎士道にルーツを持つ欧州発祥のスポーツ、フェンシングには三つの種目がある。 太田雄貴さんが2008年北京五輪で日本勢初のメダルを手にしたのが、両腕と頭部を除く胴体が有効面の「フルーレ」。東京五輪で男子団体が金メダルに輝いたのは、全身が有効面の「エペ」。唯一、五輪メダルと縁がないのが、ほかの2種目のように突くだけでなく、斬るのも得点となる「サーブル」だ。 いわば日陰の存在だったサーブルが、江村美咲さん(25)の台頭で、一変した。 「パリでは、自分を信じて楽しんで試合をやりきれば、金メダルが取れると信じている」 大言壮語ではない。「楽しんで」という言葉からは、悲壮感も漂わない。何より、実績という裏付けがある。 日本が誇るただ一人の、個人種目の現役世界チャンピオンだ。 2022年の世界選手権(エジプト)で頂点に立ったのが日本女子では初、男女を通じても2015年の太田雄貴さん以来、史上2人目の偉業だった。 江村さんは昨夏のイタリアでの世界選手権で2連覇を飾った。パリ五輪で表彰台に上がれば、フェンシングの日本女子では五輪初の快挙となる。 「これまで日本選手が成し遂げられなかった結果を残せてきたのはうれしい。五輪にはサーブル、女子とも日本勢初のメダリストとして名前を刻める可能性がある」 前人未到の壁を壊してきたことへの喜びが、新たなエネルギーを生む。