【バイデンが生んだ無秩序な世界】新たな米大統領は“失敗”を変えられるのか
2024年9月23日付ウォールストリート・ジャーナル紙は、「バイデンは後任者に無秩序な世界を引き継ぐ」との社説を掲載し、バイデン政権の各地での政策の失敗を強く批判している。 バイデンは、より危険で米国の利益や自由民主主義が悪化した世界を後任に引き継ぐ。世界は民主主義と権威主義の闘いだと言う彼にとり、権威主義は世界中で前進中である。 バイデンのアフガニスタンからの撤退は最悪の決定で、次から次へと問題を発生させた。タリバンの支配で、多くの女性が酷く傷つき、テロの楽園が再構築された。 より深刻なのは、米国の抑止の信頼性が崩壊したことだ。バイデンは対ウクライナ武器供与を拒否してプーチンを宥めようとしたが、プーチンはウクライナを侵略した。ウクライナが勇敢に抵抗した後は武器を送ったが、少な過ぎ遅過ぎた。10万人以上が死んだ今でも、バイデンはウクライナのATACMS長距離ミサイルの対ロシア使用許諾を躊躇している。 中東は一層悪い。アブラハム合意を進展させず、サウジアラビアが攻撃兵器でフーシ派と闘うことを禁止した。核合意再開のためイランの宗教家に媚びを売り石油制裁を拒否した。 ハマスがイスラエルに侵攻後、米国の最重要同盟国イスラエルは多方面で戦争中である。ガザの防衛作戦は続き、ヒズボラと新たな戦闘が始まり、フーシ派は紅海周辺の商業海運を止めている。 イランは核兵器国化しつつある。バイデン政権は口では「受け入れられない」と言うが、イランが核兵国化すれば、世界の安全保障上の計算はひっくり返る。 アジア太平洋は外交的には少しマシだ。特に豪州、日本、フィリピンとの関係で、中国に対抗した同盟を強化した。米国、英国、豪州3カ国の安全保障の枠組みAUKUSは重要で日米のより緊密な軍事的統合も大事だが、外交は軍事力で裏打ちされていない。
米国はAUKUSの約束と米国の所要に見合う潜水艦建造をしておらず、米軍基地は中国の台湾侵攻を破るに必要な防空システムと長距離ミサイルを持っていない。また、中国のフィリピン船舶への虐めは止まらない。 本国周辺でもベネズエラの独裁者は選挙結果を改ざんした。石油制裁を緩和したバイデン政権のナイーブさが露呈した。メキシコは権威主義に傾斜しているが米国は抗議していない。キューバは革命を輸出している。難民が押し寄せ全土の重荷になっている。 新反米連合が形成されている。イランはロシアにドローンを供給し、ロシアはイランに核兵器技術を提供するかもしれない。中国はロシアを支援しロシアは中国と海軍合同訓練を実施している。北朝鮮もロシアに武器を供与し中国は北朝鮮を守護する。 全ては1930年代以降最悪の世界秩序劣化と米国の影響力低下を招いている。しかしバイデンは平和な時代の大統領のような発言と行動を続けている。 任期中に毎年国防費削減を提案したのは責任放棄の最たるものだ。現在の嵐への対応は危険で、まず米国の抑止力回復が必要だが、それには一層の軍事力と政治的決意が必要だ。次の大統領はバイデンの失敗政策を放棄しなければ、世界的紛争に破滅的な結果をもたらす。 * * *