隣人が同性カップルだと、なぜ嫌なの? 「生きづらさ」強いる元首相秘書官の差別発言、G7サミットを機に本当に理解は進むのか
先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)の開催を機に、性的少数者の権利擁護に対する関心が高まっている。性的指向や性自認に関する議論は多岐にわたるが、大きな論点の一つが「同性婚」の法制化だ。共同通信が3~4月、全国の3千人を対象に実施した世論調査では、71%が「同性婚を認める方がよい」と回答。「認めない方がよい」の26%を大きく上回った。 一方、今年2月には岸田文雄首相の秘書官を務めていた荒井勝喜氏が「(同性カップルが)隣に住んでいたら嫌だ。見るのも嫌だ」などと発言し、国会でも大きな問題となった。首相はその後、荒井氏を更迭した上で「不快な思いをさせてしまった方々におわび申し上げる」と陳謝したが、首相のスピーチ作成も担う最側近の一言は、官邸と世論の乖離を浮き彫りにした。 なぜ、高い人権意識が求められる政府官僚からこうした差別発言が飛び出すのか。また実際のところ、同性カップルは地域コミュニティーの中でどのように暮らしているのか。当事者の声や研究データから、その実情を取材した。(共同通信=伊藤怜奈、山本大樹) ※記者が音声でも解説しています。以下のリンクから共同通信Podcast「きくリポ」をお聞き下さい。
https://omny.fm/shows/news-2/19 ▽周囲になじみ、近所の人が子守や犬の散歩も 古い町家が立ち並ぶ京都市内の住宅街で暮らす坂田麻智さん(43)とパートナーのテレサさん(40)。レズビアンの2人は2015年、同性カップルの婚姻が認められた米オレゴン州で結婚した。昨年8月には、知人男性から精子の提供を受け、テレサさんが長女を出産している。 現在の家で暮らし始めたのは10年前。30年以上空き家だった木造の町家を麻智さん名義で購入した。近所には長年住み続けている人や高齢者も多いが「性的マイノリティーであることで暮らしにくさを感じたことは一度もない」(麻智さん)という。 引っ越してきた直後は、近所の人にも2人のセクシュアリティーや関係性は話していなかった。まずは町内会主催の行事に積極的に参加。交流の機会を増やし、徐々に周囲になじんでいった。引っ越しから1年後、地元の新聞社から取材を受けたことをきっかけに、同性カップルであることをカミングアウトした。近所の人は「新聞に出てたね」「見たよ」と明るく声をかけ、今までと変わらない態度で接してくれた。