隣人が同性カップルだと、なぜ嫌なの? 「生きづらさ」強いる元首相秘書官の差別発言、G7サミットを機に本当に理解は進むのか
では、この状況から脱するにはどうすれば良いのか。河口教授は「交流を重ねて、周囲の人々が性的少数者のことを『異質な存在』だと感じないようになるのが一番だが、そもそもカミングアウトするかどうかは当事者が決めること。まずは周囲の側が、身近に性的少数者がいるかもしれないという想像力を持つ必要がある」と語る。自分とは性的指向や性自認の異なる人がいるということを知り、思いを巡らす。そんな地道な取り組みが重要になる。 ▽注目集める「LGBT理解増進法」、渦中の自民党は… 国会ではこうした性的少数者に対する理解を広げるための「LGBT理解増進法案」に注目が集まっている。4月にまとめられたG7外相声明では、性的少数者の権利保護についても「G7の継続的なリーダーシップを再確認する」と明記された。G7各国は日本に速やかな法整備を求めており、国内でも自民党以外の各党はこの法案をサミット前に成立させるべきだとの立場で一致していた。
渦中の自民党は4月28日に党内で会合を開き、法案を巡る議論を約2年ぶりに再開した。2021年には与野党でいったん法案の内容に合意したものの、保守系議員らの反発を受けた自民党が土壇場になって了承を見送った経緯がある。今回も反対派の意見を踏まえ、超党派でまとめた法案の文言を一部修正し「与党案」として提出することになった。立憲民主党などとの距離は広がる一方で、法案の成立時期は不透明だ。 法案提出が決まった今もなお、自民党内には反対の声がくすぶる。出生時の性別と本人が認識する性別が異なるトランスジェンダーへの対応で意見が割れているほか、同性愛者についても「社会の根幹、家族そのものに関わる問題であり、慎重に対応すべきだ」との声が上がる。 性的少数者や支援者らの団体は4月末、自民党の議論再開を受けて記者会見を開き、法整備の必要性を改めて訴えた。その中で、同性婚の実現を目指す公益社団法人「マリッジ・フォー・オール・ジャパン」で共同代表を務める寺原真希子弁護士は次のように述べている。
「世論の7割は既に同性婚に賛成しており、社会は準備ができている。議論が進んでいないのは国会だけだ。理解と法整備は、同時に進めるもの。当事者が被っている人権侵害を本当に解消しようと考えるのであれば、法律に差別禁止を明記した上で、同性婚の実現に向けて民法改正を進めるべきだ」