増える集中豪雨対策に「避難スイッチ」 視覚効果で警戒呼びかけ 4年前被災の熊本で
7月の梅雨期に発生する集中豪雨は、線状降水帯を含め年々増えている。令和2年には熊本県内で災害関連死を含め67人が犠牲となったが、集中豪雨の半数は九州西部で発生するとされる。熊本豪雨から4日で4年。逃げ遅れを防ぐには危険の早期周知が何よりも重要で、熊本県では豪雨の教訓から照明の視覚効果で住民に避難を求める「避難スイッチ」を導入するなど対策も進む。 【グラフィックで解説】熊本県人吉市のライティング防災アラートシステム 6月27日、気象庁は熊本県に線状降水帯が発生する恐れがある「半日前予測」を出した。都道府県単位での予測は同県で初めて。ただ、同県人吉市の球磨(くま)川にかかる「水の手橋」の照明は電球色から変わらなかった。 照明は川の水位が上昇するにつれ電球色が白、赤、赤の点滅と変わる仕組み。4年前の豪雨を受け、視覚効果で警戒を呼び掛ける全国初のシステムとして導入された。 「今回は本当に何もなくてよかった」。橋の近くに住む深水雄二さん(73)は話す。深水さん宅は4年前、床下浸水に遭っていた。「一つの目安として橋のシグナルは重要。いつ水災害は来るか分からない。緊張感を持てる」と強調する。 熊本豪雨の際、市民からは「防災行政無線が雨の音にかき消され聞こえなかった」との声が多く寄せられた。解決策の一つとして、観光向けの照明を水位センサーと連動させ、変色で危険を周知するようにした。市の担当者は「観光客を含め危険を察知してもらえるように備えることが人的被害を減らすことに繋がる」と強調する。 気象庁が全国1300カ所の観測地点を対象にした調査では、車の運転も危険とされる1時間降水量80ミリ以上の豪雨の頻度は、昭和55年ごろと比べ約1・7~2・3倍に増加。また、同庁気象研究所によると、昭和51~令和4年の梅雨期に発生した集中豪雨は606事例あり、半数ほどが熊本県など九州西部に集中していたとする。 熊本県は今回、半日前予測の直後、「空振りを恐れず、住民の命を守る体制を」と呼びかけ高い警戒感を示した。14府県で300人超が犠牲となった平成30年の西日本豪雨は最初の大雨特別警報が出て6日で6年。今年も特に梅雨明けまでの時期は、全国地域を問わず警戒が求められる。 ■水災補償加入率は右肩下がり