「東京一極集中」のメリット・デメリット 論点は? 解決策は?
こうした動きを地方はどう見ているか。宮城県内にある、大学の副学長は「東京がやっていることは我々を苦しめることだけだ。来るたびに高層ビルが目に見えて増え若者を飲み込んでいく。我々の世代はともかく、次の世代はどうなる? 地方の暮らしはどうなるのか?」と首をかしげる。この見方は東京以外に住む人々が少なからず抱く共通感情ではなかろうか。
東京一極集中のメリット
それでは、東京一極集中のメリットとデメリットは何なのか。まずはメリット面から見ていきたい。 明治維新から150年。ひたすら西欧先進国を意識して“追いつけ追い越せ近代化”を求めた日本。1945年の太平洋戦争敗戦後も驚異的な復興を遂げ、その姿は“東洋の奇跡” とも称された。日本は東京一極集中のメリットを最大限活かし、その“奇跡”を実現してきたと言ってもよい。そのメリットは次の3点だ。 【1】 “集積が集積を呼ぶ”、「規模の経済」を最大限活かしてきたこと。大企業の7割が東京に本社を置く。以前筆者がその理由を聞いたところ、以下のような回答が得られた。 (1)仕入れ・販売など取引に有利(4割) (2)中央省庁との接触が便利(2割) (3)自社の支社・営業所・工場の統率に便利(1割) (4)人材確保・金融取引に有利(1割) (5)情報発信力が強く影響力がある(1割) 【2】 大規模市場の存在。都民だけで1000万人規模、東京圏民で2000~3000万人級の巨大な買い物市場を形成してきた。あらゆる商品、あらゆる品数が揃う。労働市場も一極集中的だ。東京で日本全体の大学生の4割が学び、就職時には若者の7割が東京に職を求める。多様な選択肢があり、魅力的な仕事が多く、自分を磨き挑戦できる職場があるからであろう。 【3】 首都である東京のブランド力が高い点。江戸時代から400年以上日本の中心で首都機能がある。東京にオフィスを構える企業、各種団体のプラスイメージ、都心に事務所、店を出すステータス、信用度は計り知れない。世界でもニューヨーク、パリ、ロンドンと並び「TOKYO」の知名度は高い。国際会議、外国人観光客も東京へ。国際金融市場での相場形成力も高い。 こうした利点が複合して東京の価値を上げている。東京一極集中を肯定的に捉える識者の中では「政府がいかに分散政策を実行しようと努力しても、第3次産業が都市部で栄えるうねりを止めることはできない。経済のグローバル化が進む中、東京が世界との都市間競争に向かう流れを止める訳にもいかない」という主張がある。だから“東京一極集中が日本を救う”のだ、と。