「東京一極集中」のメリット・デメリット 論点は? 解決策は?
【提言】東京の人口・企業を2割減反したらどうか
東京一極集中をどうするか。解消方法には百家争鳴(ひゃっかそうめい)、いろいろな意見がある。20年前は首都機能移転を試みようとした。10年前は道州制へ移行しようと試みた。遡(さかのぼ)れば1960年代から全国総合開発計画をつくり分散化を図ろうとしてきたし、「工場等制限法」を制定し東京区部等から工場や大学の追い出しをやってきた。にも拘らず、東京一極集中は止まらない。詳しくは『この国のたたみ方』(新潮新書)をご覧いただきたい。ここでは筆者の確信する持論を述べよう。 端的に「東京2割減反」を唱えたい。人も企業も2割減らす。その分を地方に回す誘導策を本気でやること。超肥満となり身動きのできなくなったマンモスは死ぬ。今の東京はそのように見える。これを筋肉質でスリムな能力の高い東京に変えていく構造改革が不可欠である。 まず第1に、中央集権的な統治機構の解体、特に47都道府県を廃止し州に変えることだ。 いつの間にか100兆円を超える国家予算となり、1200兆円を超える借金、そして国は1府12省の本省と多くの地方支分部局、47の都道府県庁と無数の出先機関、さらに20政令市と175行政区、1724市町村(2020年1月現在)、さらには多くの出張所という具合に三重にも四重にも折り重なり目一杯に行政機関が広がっている。これを維持する経費だけで膨大なものとなる。この統治の仕組みを人口減少に合わせシンプルに畳み直す「日本たたみ方革命」、これを筆者は廃県置州の国づくりと呼ぶ。こうしたたたみ方改革で行政の重複をなくすことができ、10兆円20兆円規模の削減が可能だ。 明治の「廃藩置県」が人口拡大期に備えた政治革命だったとすれば、未曽有の人口縮小期に備えた政治革命は「廃県置州」だ。日本を10程度の広域圏からなる州とし、それぞれ内政の拠点として自立できるよう大胆に分権化する。すると内外に競争関係が生まれ、日本に活力が湧き出てくる。結果、ムダは省かれ地方分散も進み増税は不要となる。 もう1つ。新幹線、高速道を事実上タダにすること。日本は米国カリフォルニア州ほどの小さな国で端から端まで行くのにそう遠くない。そこに新幹線、高速道が張り巡らされ、どこに行くにもそう時間はかからない。だがカネがかかる。これがバリアになって人が動かない。ここを直すと良い。 交通系でいえば、新幹線料金を国の負担で3分の1まで下げ、普通運賃並みで乗れるようにする。このコストは毎年集めているガソリン税(目的税)と地方に配る地方交付税から5兆円抜き出し充てる。そんな事出来る訳がない。ポピュリズムだという批判もあろうが、実は今でも地方創生と称し5兆円規模の分散対策費を出している。その効果はパッとしない。まして土地が狭く過密で、地価が高い東京の再開発をするより、はるかに安い。そうすれば、若い人たちは万遍なく地方にも住むようになり、「東京圏」も仙台、新潟、名古屋まで広まる。若い人に年老いた両親も付いていく。こうして東京一極集中は緩やかになくなっていく。 さらに大手の大学も定員を2割減反し地方分校をつくる。政府は東京区部の大学定員の抑制策(10年間)を始めたが、方法が間違っている。若者の「大手の有名大学」で学びたいという希望者が多い。その欲求と、大都市の人口抑制を両立させる方法は他にある。例えば早稲田や慶應や「明・青・立・中・法大(MARCH)」など著名な大手校に働きかけ、総定員の2割か3割を地方分校(慶大北海道校とか早大九州校など)の創設に振り向ける。「東京大学減反」をやるのだ。大学という青春時代を地方で経験すると地方志向の若者も増えるのではないか。かつての旧制高校はそれで成功している。