「元気な自分を演じ続けていた」つらい高校時代を過ごした山之内すずが語る、ネガティブな感情と付き合う方法
ポジティブな言葉を言い続けて“自己肯定感鬼高人間”に
――自分のことを自分が愛してあげることがすごく大事と思えるようになったきっかけはありましたか? 山之内すず: 自分のことを好きだと受け入れるのがずっと怖かったんですけど、「今の自分が好き」って言えるようになったことで、何もかもが変わっていきましたね。自分のことを受け入れたらネガティブなことを周りにあまり言わなくなった。自分に言い聞かせるようにポジティブな言葉を言うときもあるんですけど、それでつらくなることもなくなったし。 たとえば「山之内すずの鼻がブサイク」っていうコメントをSNSで見かけても、「いや、絶対すずの鼻は可愛い」って言えるんですよ(笑)。外見の自信がついたからではなくて、内面の自信がついたからこそ、外見がそんなに気にならなくなったのかな。 あと、ポジティブな言葉を言えば言うほど気分が上がるし、周りの空気もよくなるし、気づいたら周りにいる人も環境も変わってくるんですよ。今は明るく元気になった自分をより高めてくれる人が周りに増えてきたから「周りの人たちってほんまに自分の鏡なんやな」って感じるようになりましたね。 周りの人を見て自分に自信が持てるというか、「こんな素敵な人たちに愛されてる自分ってけっこうイケてるやん」って。すっかり“自己肯定感鬼高人間”になりました。持ち物も真っ黒しか持たなかったのに、めっちゃカラフルになって、わかりやすく変わってます(笑)。 ――今はネガティブな感情とどう付き合っていますか? 山之内すず: ネガティブな感情があるからこそ、幸せをより大きなものとして受け取れるので、その感情自体が悪いわけじゃないとは思ってます。そのうえで、ネガティブな感情も自分の中で消化できるようになったから、無理して明るく振る舞うこともなくなりましたね。 元気がなくなったら、とりあえずデカい声出します。私、気づいたんですよ。どんだけ気分が上がらへん日でも、無理にでも体を動かして、デカい声出してたらだいたい楽しいって。だから最近、元気のない周りの友だちとかにもめっちゃおすすめしてます。 あとは感じたことを文字に残したり、人としゃべったりすることで、自分の考えを整理することはしてるかな。もともと自分の感情を表現するのが得意ではなかったんですけど、今のお仕事を始めてから自分の感じたことを言葉にして伝えるって大事だなと気づいて、そこから言葉に表す練習をものすごくしたんです。 ファンの子にも「私のダイレクトメッセージの欄とかに嫌なことがあったら全部書いてくれてええよ」とよく言っていて。それは、吐き出すことで楽になるかもしれないし、数年後にそのメッセージを自分で読み返したときに「あのときこんなこと思ってたんだ」と自分の変化に気づいてもらえるかもしれないと思ってるからでもあります。 ――山之内さん自身がそうした自分の変化に気づいた出来事はありますか? 山之内: いいなと思える作品の幅がすごく広がったことですね。昔は、音楽にしても、映画にしても、自分に重ねて見られるような、ネガティブな感情に寄り添ってくれるものが好きだったんです。「夢に向かって」とか「家族愛」みたいなものが苦手やったし、そんなんよりも裏切られ続ける主人公が好きでした。 最近観た『Coda コーダ あいのうた』も、過去の自分やったら「家族ってこんなに感情をぶつけられるんや、でも私は……」と自分と比較してきっと落ち込んでいたけど、今の自分は「私もいつかこんな素敵な家族を持ちたいな」って思えるようになった。そんな自分がうれしいです。 ポジティブな言葉を聞きすぎるとしんどくなってしまって、根拠のない「大丈夫」とか、他人から言われる「頑張れ」にずっとイライラしてたんですけど、今やったらすごくパワーを感じられる。同じ言葉でも、自分のメンタルの状況によって捉え方がこんなに違うんやってすごく感じましたね。 ネガティブになる自分も、頑張りすぎてしまう自分も、頑張れない自分も、全部自分やし、全部好き。きっとこれからも気持ちが落ちて上がってを繰り返すんだと思うんですけど、もう昔ほど落ちることがないなって自信を持って言えるようになりました。 ----- 山之内すず 2001年10月3日 兵庫県神戸市生まれ。タレント・女優。2019年AbemaTVの恋愛リアリティーショー「白雪とオオカミくんには騙されない」の出演をきっかけに芸能界デビュー。同世代から絶大なる支持を集め、SNS総フォロワー数は110万人を超える。現在ではテレビCM、地上波テレビ番組だけでなく、女優として映像作品にも出演するなど、活動の幅を広げている。 文:佐々木ののか (この動画記事は、TBSラジオ「荻上チキ・Session」とYahoo! JAPANが共同で制作しました)