日本ではまだ2回目、ますます人気に…絵本作家ゴーリーの巡回展 奈良でしか見られない展示とは?
『うろんな客』『ギャシュリークラムのちびっ子たち』など…モノトーンの独特な世界観と、次々と不幸がふりかかる陰鬱で不思議なストーリーで、熱狂的なファンが多い絵本作家のエドワード・ゴーリー。現在、日本で展示『エドワード・ゴーリーを巡る旅』が巡回中だが、「奈良県立美術館」(奈良市)で11月10日までおこなわれている奈良限定の展示に注目だ。 【写真】奈良限定の企画がコチラ ■ゴーリー好きを公言するのは… 米津玄師がファンであることも有名で、SNSで「エドワード・ゴーリーとか好きですか?」と尋ねられたときに、本人自ら「好きです」と答えたことも。巡回展はまだ2回目で、前回の関西は、2016年の「伊丹市立美術館(現在の市立伊丹ミュージアム)」。国内で初めて本が発刊されたのは、柴田元幸の訳による2000年だが、今後も日本で未刊の新作が販売を予定しているとのことで、人気がますます高まっていきそうな存在だ。 今回の展示は、アメリカ生まれのゴーリー(1925~2000)の終の棲家で、記念館となった「エドワード・ゴーリーハウス」で過去におこなわれていた展示を再構成。「子供」「不思議な生き物」「舞台芸術」などのテーマをもとに約250点の作品・資料を展示。幼い頃から読者家で博識、無類のバレエ好きで舞台にも造詣が深い、ゴーリー本人の魅力が伝わってくる内容となっている。 ■実は日本の影響が? 本展は、昨年度から渋谷区立松濤美術館を皮切りに始まった全国巡回展であるが、この「奈良県立美術館」では最後の展示室で奈良独自の関連展示「エドワード・ゴーリーと日本文化―20世紀アメリカの眼―」をおこなっている。ゴーリーのタッチはイギリスのヴィクトリア朝と形容されることも多いが、ゴーリー作品から垣間見える“日本”に焦点を当てた内容に。 ゴーリーは、好きな作家1位はジェーン・オースティン、その次は紫式部と数々のインタビューで明言し、繰り返して読むほど好きだったと語っている。特に感情の機微をいかに表現するかに着目していたそうで、日本の絵師たちが「源氏絵」でいかに表現したかを実感できる展示が第1章となっている。 そして、絵本『ジャンブリーズ』と七福神、雨の描き方を、浮世絵師・歌川広重の作品と比較するなど、日本美術の類似点を示すのが第2章。この企画が実現したのも同館が所蔵する江戸時代の作品が充実しているからこそで、確かに似ている!と思える作品がセレクトされている。日本美術の魅力を再確認するとともに、改めてゴーリーの博識ぶりにはうならされてしまう。 また初めてゴーリーが日本で紹介されたといわれる1976年の『ミステリマガジン』も展示されているのでお見逃しなく。同館の学芸員・村上かれんさん(26歳)が担当し、本人による単眼鏡ツアー(10月19日・3回予定・各回10名先着順)と、スライド・ギャラリートーク(11月2日・14時~・事前予約不要)を予定している。 ■展示だけでなく、ここもお楽しみ 今回の展示ではゴーリーの絵本のから抜粋したシーンが展示され、あらすじも記されているが、やはり絵本そのものを手にとって読んでみたくなるところ。そんな気持ちを汲んでか、展示途中に、カーペットが敷かれた読書スペースが設けられているところもうれしい。普段だったら子どもたちが中心になるところだが、あぐらをかいたり正座して、読書を楽しむ大人が続出する人気コーナーに。 最後のグッズ売り場ではアイテムも豊富にそろい、『不幸な子供』のシャーロットのアクリルスタンド、アメリカからの輸入品の2025年のカレンダー、パリで活躍するデザイナー宮白羊さんがデザインしたTシャツなども並ぶ。ほかの来館者を見ていると、買い物カゴがいっぱいになっている人も珍しくなかった。 鑑賞の際は、座りやすい服装で、時間に余裕を持って、また絵が大変細かいため、単眼鏡がある人はぜひ持参を。期間は11月10日まで、10月21日休館。一般1200円。今後は、2025年3月に愛知、2025年4月に香川へ巡回予定。 また「奈良県立図書情報館」では『ゴーリーの世界へ飛び込むーゴーゴーゴーリー』と題して、ゴーリーの著書をはじめ、東西の美術、源氏物語など関連本も集めた企画展を開催。大和西大寺の「ジュンク堂書店 奈良店」では絵本フェア、郡山の「本やとほん」にも小さいコーナーをもうけるなど、奈良の本スポットでも盛り上がりを見せている。 参考文献:『エドワード・ゴーリー インタビュー集成 どんどん変に…』 編:カレン・ウィルキン 訳:小山太一・宮本朋子