日立や中国中車以外の鉄道メーカー最新事情 欧州勢の狙いは中東?水素車両一段落、目立つ新車の「納期遅れ」
そんな状況もあり、同社の出展は2階建て連接電車「コラディアMAX」と、旧ボンバルディア由来の「TRAXX3」機関車、そしてベルリン市向け低床トラムといったラインナップにとどまった。過去数回は水素燃料車両をいち早く展示発表し、ドイツではすでに営業運転を開始したものの、故障続きでまともに走らないという状況から、今回は展示がなかった。 その一方で、大手メーカーの隙を突いて相変わらず元気がよかったのがスイスのシュタドラーだ。大量の車両を展示したが、中でもとくに注目されるのはバッテリーおよび水素燃料を動力源とする「RS ZERO」と、イギリス向けの99型(Class 99)機関車だ。
RS ZEROは、シュタドラーの地方路線用ディーゼルカー「レギオシャトル」の後継として位置付けられているようで、バッテリーもしくは水素燃料のいずれかを動力源として選択できる。当初は既存のレギオシャトルを改良することも検討されていたが、バッテリーや水素燃料搭載のためのスペースを生み出すことが難しく、またTSIの最新基準に準拠させるため、完全新規設計となった。最高速度は動力源を問わず時速120km。バッテリーを選択した場合、屋根上にパンタグラフが搭載され、起終点で架線から電気を取り入れて充電する仕組みとなっている。
イギリス向けの99型電気機関車は、同社の売れ筋となっているバイモード(電化・非電化区間両用)仕様で、電気機関車としては6170kWの性能を誇り、カミンズ製16気筒ディーゼルエンジンからは1790kWの出力を得る。 近年の欧州では、一般的な電気機関車はシーメンスの「ヴェクトロン」が他社を圧倒しているが、バイモード機関車に関してはシュタドラーが幅を利かせている。99型は、リース会社ビーコンレイルから30両発注され、さらに20両のオプションが用意されている。
■新型車苦戦と買収騒動に揺れるタルゴ スペインのタルゴは、前回のイノトランスでドイツ鉄道向けの新型客車「ICE-L」を展示したが、それから2年経過した現在も運行に必要な認可を取得できておらず、現時点で納期が2年近く遅れることが発表されている。 ドイツ鉄道は従来の客車に代わる次世代の長距離列車として、タルゴの連接式客車の導入を決めたものの、納期は現時点も不明で、当面は旧型客車をそのまま使い続けなければならなくなった。既存の技術とは異なる、まったく新しいものを導入する際に付きまとうリスクである。