沢田研二「“オワコン”と言われてから復活」のすごみ 75歳のジュリーはなぜ再ブレイクできたのか
今も沢田研二のライブに通い続けることを生きる目的としている人は大勢いる。そして、沢田研二自身も、ぎっしり埋め尽くされた(ここが重要である)客席で彼の歌に耳を傾ける大勢のファンの熱気を吸い込み、スターの輝きを発光するのだろう。 知り合いのファンの方が、「MCで『みんな、僕と目が合ったと思っているでしょう。でも僕は全然見てませんから』とジュリーが言うのよ。本当に一言多いんだから」と笑いながら教えてくれた。ユーモアたっぷりなトークもまた、ライブの醍醐味だろう。
ドタキャン騒動後のコンサートのMCでは、 「(ドタキャン時の会場である)さいたまスーパーアリーナに来た人たちが文句を言わないと信じられた。それを(信じられた)僕はうれしかった。ライブで、肌で感じるファンの人の気持ち、あの場所に来てくれて、それを許してくれたファンが偉いと思う」 と語ったという。独特の戦友感を、沢田研二とファンの間に感じる。 ■「昔ジュリー、今ジジイ」 今も沢田研二はオリジナルキーで歌い、舞台狭しと縦横無尽に駆けながら歌う。 彼はラジオ「今日は一日“ジュリー”三昧」(NHK-FM、2008年11月3日放送)で、自分の“一生懸命”のありかたについてこう語っている。
「僕のいいところはね、出るところに出たら、一生懸命やんねや。一生懸命やることには自信がある。それがいいかどうかは別ですよ、ただ一生懸命やる。誰かに教わって、その通りにするのはできへんけど、自分なりの一生懸命やるってことはできるんだよね」 こうして、一生懸命をくり返してきた彼のコンサートは現在、チケットが争奪戦。今年1月12日からスタートした全国ツアー「沢田研二 LIVE 2024『甲辰 静かなる岩』」も完売し、9月から追加の7公演が決定している。
時代とともに価値観は変わる。評価の基準も変わる。その中で、追い風になろうが向かい風になろうが、自分がやりたいことをやりたいように続けていく沢田研二。 もちろん、その生き方は特別で、参考になるとは言えない。ただ、沈んでは浮き上がってくる彼の活躍と、彼を取り巻く熱気を見るだけでも、シニアになってからどうたくましく生きていくか、ポジティブにイメージを膨らませることはできるのである。 また、BSシネマでは、6月19日に、映画『幸福のスイッチ』(2006年)が放送される。沢田研二が58歳のときに出演した作品だが、加齢を楽しんでいるような彼の姿が印象的。麗しい「ジュリー」を脱ぎ捨て、自然な「沢田研二」をさらし、昔気質の電気屋を演じている。