プロ野球引退後、会社員希望が急増も立ち塞がるサードキャリア問題!
川口氏は、「元プロ野球選手という人材を求めている企業は少なくありません。僕も受け入れ先の企業を探して営業に回っていますが、どの会社も『元プロ野球選手が来てもらえるのですか?』と好意的に話を聞いてくれます。特に、そういう新しい人材を入れることで社風を変えたいというような成長企業に人気があります」と言う。 だが、その一方で「まだまだ一般企業への就職は簡単ではないといわざるを得ません」と言う実態もある。 会社員を希望しても、まだ受け入れ企業は限られていて、しかも、せっかく就職をしても、安易な選択をすると、入社した後にギャップが生まれ、退職してしまうケースも少なくないというのだ。 川口氏は、「おそらく就職した3分の1程度が転職しています。セカンドキャリアと同じくらいにサードキャリアの問題も深刻なんです」という。会社員の道を選んだ場合、セカンドキャリア以上に、サードキャリア問題が立ち塞がる。 「代表的なものが給料です。最初は、手取りの給料20万円スタートがあたり前ですから、何千万ももらっていた選手にすれば、『なんでこんなに安いの?』と理解できないのです。もうひとつは仕事の中身。『ただ紹介されたから』で就職して、やりがいや生きがいを感じることができずに辞める選手がたくさんいます。福利厚生や社会保険の仕組みさえ知らない選手もほとんどです。 まずじっくりと話を聞き、自分が何をしたいのか、何ができるのかと事業内容を含め納得した上で、10年、20年働くビジョンを描いて就職するべきでしょう。そうしなければ長続きはしません。僕も引退して5年目ですが、やっと今の給料をもらうためには、いったいいくら売り上げを立てて会社に貢献しなければならないのかという企業の仕組みがわかってきました。一般企業への就職が、セカンドキャリアで人気ならば、選手が企業に入ったときにギャップを生み、サードキャリア問題を生じさせないような啓蒙、教育活動をNPBも、そして僕たちも積極的に行っていかねばならないと考えています」 例年、100人前後の元プロ野球選手がユニホームを脱ぐが、一般企業への就職率は、まだ10パーセント程度だという。NPBには、キャリア担当者がいるが、部著にそれ相応の予算がついているわけではなく、Jリーグにそれに比べると、ずいぶんとお粗末なもの。戦力外の男たちをテーマにしたテレビ番組が人気を集めているらしいが、華やかな世界の裏側にある残酷なセカンドキャリア問題には、まだハッキリとした解決の道筋は生まれていない。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)