ニュースでよく見る「中東和平交渉」の焦点は?
【高橋和夫・放送大学教授】 イスラエルとパレスチナ暫定自治政府が、中東和平交渉を3年ぶりに再開しました。パレスチナ問題の最終的な結着を目指しています。 東地中海に面した土地パレスチナをめぐって、主としてヨーロッパでの迫害を逃れてやってきたユダヤ人と先住のパレスチナ人が19世紀末から争ってきました。ユダヤ人たちは古代において自分たちの祖先が暮らしていた土地に戻ってきたとの主張です。 第二次世界大戦後にユダヤ人たちは、パレスチナの78パーセント程度の土地にイスラエルを建国しました。その広さは、およそ2万2千平方キロメートルで四国くらいです。その時に多くのパレスチナ人が難民となりました。1967年の戦争でイスラエルは、パレスチナの残りの22パーセントの土地であるガザ地区とヨルダン川西岸も占領しました。ガザ地区は365平方キロメートルで東京23区の約6割程度です。そしてヨルダン川西岸地区は5,655平方キロメートルで三重県と程度の広さです。
落としどころはパレスチナ国家の樹立
1990年代のイスラエルとパレスチナ人の和平交渉の結果、パレスチナ暫定自治政府が、ヨルダン川西岸の一部とガザ地区で自治を始めました。今回の交渉の落としどころと考えられているのは、ヨルダン川西岸とガザ地区を領土とするパレスチナ国家の樹立です。 イスラエル人がヨルダン川西岸にパレスチナ人から土地を奪って移り住む入植と呼ばれる活動が続けてきたため、2010年からパレスチナ側は交渉をボイコットしてきました。 パレスチナ側は、ピザをどう分けるか二人で交渉をしようとしているのに、一方が既に食べていると状況を表現しています。ピザとはヨルダン川西岸のたとえで、食べている人はイスラエルです。 しかし、イスラエルが拘束しているパレスチナ人の一部の釈放を約束したのを受けて、パレスチナ側が交渉の再開に同意しました。パレスチナ国家とイスラエルの国境の確定、イスラエル成立時に難民となったパレスチナ人の故郷に戻る権利、そしてユダヤ教、キリスト教、イスラム教という三つの宗教の聖地であるエルサレムの地位などの難しい問題を9ヶ月の交渉で乗り越える、と仲介に当たったアメリカのケリー国務長官が言明しています。