巨大ITが激しい開発競争…安全対策後回し、識者「ツケを払うのは一般市民」
「ここ数年、安全対策は華やかなサービスより後回しにされてきた。オープンAIは安全第一のAI企業にならなければいけない」。安全対策の責任者を務めていたヤン・ライカ氏は今年5月に退社した際、X(旧ツイッター)で経営陣を批判した。
AI研究の第一人者、ジェフリー・ヒントン・トロント大名誉教授は10月8日、ノーベル物理学賞の決定を受けた記者会見でオープンAIに苦言を呈した。「サム・アルトマン(CEO)は安全よりも利益を重視するようになっている。残念なことだ」
オープンAIは10月2日、新たに66億ドル(約1兆円)の資金を調達したと発表。生成AI開発を一段と加速する構えだ。これまでの非営利重視の体制から営利重視へと組織を再編するとも報じられている。ビジネスの論理を前に、「全人類に利益をもたらす」とした設立理念は揺らいでいるように見える。
「開発一時停止」の書簡には、3万3000人を超える署名がなされた。FLIの広報責任者、ベン・カミング氏は巨大ITなどによる開発競争に強い懸念を示す。「激しい競争圧力によって、彼らは安全性を犠牲にせざるを得なくなるだろう。そのツケを払うのは一般市民だ」