「近大マグロ」だけじゃない 食欲の秋全開! 大学美味ブランド
今秋、太平洋クロマグロの幼魚漁獲枠半減が決まり、一段と期待を集めたのは2002年に近畿大学が完全養殖に成功した『近大マグロ』。漁獲した幼魚を育てる「蓄養」と異なり、人工孵化させたクロマグロの卵をさらに孵化させる世界初の完全養殖は、海洋資源に負荷をかけません。デリケートかつ謎に満ちた生態から「完全養殖は不可能」とされたのも今は昔。現在、国内のクロマグロ出荷量の約4分の1を近大ルーツ(人工種苗)の魚が占めているそうです。 2004年に出荷が始まった近大マグロは、百貨店などで販売されるほか昨年4月に大阪・梅田、12月には東京・銀座にパイロットショップがオープンしています。「美味しくて安心・安全」と人気を呼び、現在もディナーは1カ月以上先も予約で一杯のまさにブランドマグロ。今年、近畿大の一般入試志願者数は早稲田、明治を凌ぎ日本一に躍り出ましたが、近大マグロも快挙の立役者でしょう。「マグロ効果」と報じたメディアもありました。 大学のブランド価値向上にも貢献する、美味しい「大学ブランド商品」は近大マグロだけではありません。各地の名産品や隠れた食材を大学独自の視点とR&D力、ときには産学官の連携で加工・製品化し、それぞれのカラーやテイストで味付けした「新しいご当地グルメ」。地域活性化への貢献はもちろん、研究成果の明快なプレゼンテーションでもある大学発の美味を、北からざっくり巡ってみましょう。
国立大学唯一の農畜産系単科大学である帯広畜産大の『畜大牛乳』は、1962年以来の伝統のブランド。飼料も牧草もすべて地のもの、広大な農場で健康に育った牛のミルクは甘みとコクが特徴とか。同大には大学公認のサークル「うしぶ。」があり、乳搾りの技を代々受け継いでいます。伝統では負けない北海道大学には前身の札幌農学校のさらに前身、開拓使仮学校の学生がつくった日本初のハム・ソーセージがルーツの『永遠の幸(とこしえのさち)』。かつては入手困難だったため「幻の~」と呼ばれていたそうです。商品名は札幌農学校卒業生の有島武郎が作詞した校歌に由来します。 津軽海峡を渡って弘前大には学内農場産のりんご、ふじ、王琳、陸奥を使った『アップルケーキ』『アップルスナック』『アップルデザート』など「ひろだい」ブランドがラインアップ。りんご配合の飼料で育てた黒毛和牛『アップルビーフ』もいます。米どころ山形大の『新ラブライス』は米粉100%のパン。小麦グルテンをいっさい使わず、プラスチックの発泡技術を応用してパンをふっくらさせることに成功したと聞けば、開発元が工学部なのも納得です。