【NBA】キャバリアーズを強豪へと引き上げたフロントの『3つの正解』。ドノバン・ミッチェル獲得に続く2つは……?
レブロン・ジェームズ退団から6年、再建の道のり
今のNBAはキャバリアーズとセルティックス、サンダーがトップ3を占めている。前年王者セルティックスはこの1カ月で7勝6敗とペースを落としているものの、各ポジションの選手層と経験を兼ね備えている点で、再建を終わらせた他の2チームとは違う安定感がある。キャブズとサンダーには若いチームゆえの勢いがある。特にキャブズは年末にナゲッツ、ウォリアーズ、レイカーズと『リーグの顔』を擁する強豪を撃破し、31勝4敗とリーグ首位に立っている。 ドノバン・ミッチェルという大エース、ダリアス・ガーランドとエバン・モーブリー、ジャレット・アレンと各ポジションにこれから全盛期を迎える若いタレントを擁し、今シーズンの年俸総額もリーグ14番目と安く抑えられている。来シーズンからはミッチェルとモーブリーの新契約が始まるため金額が跳ね上がるが、それでも『持続可能』なロスターを作り上げたと言える。 そのキャブズは、レブロン・ジェームズがレイカーズへの移籍を選択した2018年オフから再建をスタートさせた。ただ、その1年目はケビン・ラブやトリスタン・トンプソンなど『チーム・レブロン』のメンバーが残り、実質的には2019年の1巡目5位で指名したガーランドをコリン・セクストンと組ませた2019-20シーズンから本格的な再建に入った。そこからイサーク・オコロ、エバン・モーブリーを指名し、ジェームズ・ハーデンがロケッツからネッツに移籍するトレードに絡めてアレンを獲得と、今のチームの礎を築いている。 彼らの獲得は今でこそ大成功だが、当時のキャブズは彼らと既存の戦力が入り混じって選手の役割とプレータイムが安定せずに、チームの成績は上がらなかった。編成の失敗も少なからずあった。ケビン・ポーターJr.の可能性を生かせず、セクストンもブレイクに導けなかった。何のインパクトも残せず入っては去っていった中堅も多く、ラブとの長期契約はチームの若返りを遅らせる結果となった。 それでも2022年のドノバン・ミッチェル獲得以降、キャブズの選択に間違いはほとんどない。ミッチェルの獲得、ガーランドの処遇、ヘッドコーチ人事。キャブズはこの3つの重要な判断をすべて正解してみせた。 ミッチェル争奪戦はニックスが有利と言われていたが、セクストンとラウリ・マルカネン、3つの1巡目指名権など出せる資産のほぼすべてを投じて制した。ミッチェルはキャブズを『将来性のあるチーム』から『プレーオフで戦えるチーム』へと変えたが、大事なのはここからだ。 次はガーランドの処遇。ミッチェル加入1年目、プレーオフに進出したもののファーストラウンドでニックスのフィジカルなバスケに手も足も出ず敗退した後も、フロントはパニックに陥らなかった。この時にはガーランドが『上手いが戦えない選手』と批判され、ミッチェルがいる以上はトレードで放出すべきとの声が上がったが、フロントは彼への信頼を変えなかった。 そして昨シーズン終了後、チームは順調に成長しているにもかかわらず、再建を主導したJ.B.ビッカースタッフを解任。彼の若手を育てる手腕に疑いの余地はなく、それは現在、ピストンズを見事に再生させていることでも証明されている。しかしキャブズはもはや『勝つ』フェイズにあり、そのために必要なのはケニー・アトキンソンのような勝負師だ。2年前のキャブズをアトキンソンに任せても、選手たちはその高度な戦術を上手く遂行できなかっただろう。かと言ってビッカースタッフを信任し続ければ今の成績はなかった。まさに最高のタイミングで指揮官交代は成されたと言える。 それと同時に、キャブズはいまだ成長中のチームであり続けている。31勝4敗は、近年では2016年のウォリアーズ(73勝9敗)に次ぐ勝率だが、選手たちはまだシーズンが折り返し地点の前であることを理解している。昨シーズンまでウォリアーズのアシスタントコーチを務めたアトキンソンは「比較にならない」と笑い、ガーランドは「そんな話に興味はない」と語った。トリスタン・トンプソンは「73勝もする必要はない」と言うが、彼はあの時のウォリアーズをNBAファイナルで破ったキャブズのメンバーだ。 ガーランドは「レギュラーシーズンの記録は重要ではない。僕らにとって次のステップは東のカンファレンスファイナルだ」と語る。一昨シーズンはファーストラウンド敗退、昨シーズンはセカンドラウンドでセルティックスに敗れた。だから今回は、もう一つ先のカンファレンスファイナルを見据えている。
バスケット・カウント編集部