円安は行き過ぎ、いつ介入に動いてもおかしくない-中尾元財務官
(ブルームバーグ): 元財務官の中尾武彦みずほリサーチ&テクノロジーズ理事長は、足元の円安は明らかに行き過ぎているとし、政府がいつ為替介入に動いてもおかしくないとの認識を示した。円安是正の一つの手段として介入は有効とみている。
中尾氏は10日のインタビューで、介入には一定の水準が条件というわけではなく、「一定の動きを過度と見なして、これまでの蓄積された過度な円安と合わせて介入することは十分考えられる」と語った。投機的な動きを抑止するという意味で、為替介入には「相当の効果がある」とも述べた。
1ドル=152円を前にもみ合う展開が続いていることについては、2022年9-10月の円買い介入で同水準が「けん制になっている可能性がある」と指摘。「さらに少しでも動くということであれば、いつ介入してもおかしくない」とみている。
日銀が3月の金融政策決定会合で17年ぶりに利上げに踏み切った後も、円は約34年ぶりの安値付近で推移している。神田真人財務官は「一方的な動きが積み重なって、一定期間に非常に大きな動きがあった場合は、それも過度の変動にあたる」との認識を示している。中尾氏は年初来10円超、過去3年間で40円超の円安に振れた現状について、為替介入に十分な環境がそろいつつあるとの見立てだ。
国際通貨基金(IMF)が試算する購買力平価の1ドル=90円台、ビッグマック指数の同80円台に比べて円の安さは異常であり、「日本の国力や存在感の低下に著しくつながっている望ましくない状況」と述べた。ファンダメンタルズには購買力平価や金利差、経常収支などが反映されるが、「異次元の金融緩和が円を弱くし過ぎているのは確か」と指摘した。
緩和的な金融環境が続くとの日本銀行の見通しを前提とすれば、「米国の動きの方が為替変動を誘発する可能性がある」という。中尾氏は円安の加速を招く要因として、米国の金融政策に加え、消費者物価指数(CPI)や雇用関連統計に注目している。