「誤認逮捕」6年で5件…不手際相次ぐ滋賀県警 専門家「警察官の基本動作おろそかに」
滋賀県警で誤認逮捕が相次いでいる。2019年以降で5件目となる今回は、大津署がベトナム国籍の男性を道交法違反(無免許運転)の疑いで誤って現行犯逮捕した。専門家は「逮捕という責任の重さを改めて認識してほしい」と厳しく指摘し、県警の捜査に対する姿勢の見直しを求めている。 今回は、警察官が実際には誰が運転していたのかを十分に確認しなかったことが誤認逮捕につながった。さらに、日本語が通じなかったとの理由で、男性の言い分をきちんと聞いていなかった。 人権問題に詳しい関口速人弁護士は「運転する姿を現認しない状態では、現行犯逮捕の要件を満たしていない」と逮捕に踏み切った対応を批判する。男性は結果的に別の犯罪に関わった疑いで逮捕されたが、「本人にとっては身体拘束が長引いており、人権上問題がある」と話す。 県警ではこの6年で、5件の誤認逮捕が起きている。19年10月、生後間もない息子にかみついてけがを負わせたとして県警が母親を傷害容疑で逮捕。しかし、鑑識課が証拠の歯型を別人のものと取り違えたことによる誤認逮捕だったことが判明し、大津地検が母親の起訴を取り消した。 22年11月には長浜署が信号無視の道交法違反容疑で米原市のトラック運転手を誤って逮捕し、23年1月には県警高速隊が覚醒剤取締法違反(所持)容疑で男性を誤認逮捕している。今年4月にも、近江八幡署が食料品を万引した疑いで女性を逮捕。後に女性の知人が購入して渡していたことが分かり、女性が釈放されたのは3日後だった。 多くはケアレスミスや不十分な証拠の精査が原因で、裏付け捜査を尽くしていれば防げた事案だった。福岡や香川県警で本部長を務めた京都産業大の岡部正勝教授(警察行政法)は「証拠の収集、精査という基本的な動作をおろそかにせず、現場の警察官にはいま一度徹底してほしい。チェック体制が十分に機能しているかも見直しが必要だ」と強調した。