ワクチン接種と体調不良/死亡例との因果関係を専門家が解説
新型コロナワクチンの比較試験は史上最大規模で実施
では、その結果がどうだったかというと、ワクチンを接種した後、あるいはプラセボを接種した後に重い症状を発症した人の頻度を比較すると、ファイザーではワクチン群で0.6%、プラセボ群で0.5%。モデルナではワクチン群で0.5%、プラセボ群で0.6%という結果でした。 2つの群で重い症状を発症した人の頻度が変わらないので、ワクチンが何か重い症状を引き起こしているという証拠はないという結論になっています。 このように治験の枠組みの中で大規模なランダム化比較試験を行い、ワクチンの安全性を確認した上で、行政機関が認可をしています。 例えば、ファイザーのものであれば約4万人、モデルナのものであれば約3万人のランダム化比較試験を行っており、これは実は人類が過去に行ったランダム化比較試験の中でも最大規模の1つです。 しかし、これだけの人数を集めた治験を行っても、例えば10万人に1人や100万人に1人といった、非常に稀な副反応は検出できません。なので、認可を終えた後の「市販後調査」というのも非常に重要になってくるわけです。
米国の「ワクチン有害事象報告制度」
米国ではこの市販後調査として「ワクチン有害事象報告制度(VAERS)」を運用しています。 もしワクチンを打った後に何か体調不良をきたした人がいれば、医師や患者、あるいはその家族がこのシステムに報告します。そして、上がってきた報告をCDC(アメリカ疾病対策センター)やFDA(アメリカ食品医薬品局)などの公的機関が検証することで、ワクチンを接種したことが原因で体調不良が起きていないかということを検証しています。 特に、このワクチン有害事象報告制度では、自然に発生する病気の頻度よりも、ワクチンを接種した後に上がってきている体調不良の報告の方が多いかどうかということを調べる仕組みを用いています。 また日本でも、「副反応疑い報告制度」を用いて、ワクチンの安全性が常に検証されています。 この制度を用いてワクチンを接種した後の死亡事例の経過を専門家が一例ずつ詳細に評価しています。 厚生労働省は慎重に「因果関係が評価できない」と発表していますが、ほとんどの例で別の原因と考えられる病気が見つかっています。こうした検証の結果、今のところ日本においても米国においても、「ワクチンを接種したことが原因で死亡したと判断された事例はない」と評価されているのです。