ワクチン接種と体調不良/死亡例との因果関係を専門家が解説
ワクチン接種が全国各地で開始され、6月28日には累計接種人数が2700万人を超え、急速に進んでいる。一方で、副反応や接種後に死亡した事例なども報道されており、ワクチン接種に対する不安も根強い。 ワクチン接種と体調不良の因果関係について、世界ではどのように調査され安全性評価がされているのか、新型コロナウイルスに関する正確な情報を届けるプロジェクト「こびナビ」の副代表でもある、木下喬弘(きのしたたかひろ)医師にお話を伺った。 (Yahoo!ニュース Voice)
ワクチン接種の因果関係は個人レベルでは証明できない
例えば、ワクチンを接種した後に体調が悪くなった方がいるとします。 この方がタイムマシンに乗ってワクチンを接種する前に戻り、ワクチンを接種しない未来を選んだ時に、体調不良が起きていなかったら、それは「ワクチン接種との因果関係がある」ということになります。 一方で、同じようにワクチンを接種しない未来を選んだ時に、体調不良が起きていたのであれば、これは「ワクチン接種との因果関係がない」ということになります。 ですが、実際には時間を戻すことはできないので、個人レベルでの因果関係というのは証明が不可能なのです。
ワクチン接種の因果関係を調査する「ランダム化比較試験」
そこで、ワクチン接種と体調不良の因果関係を調べるために非常に重要になってくるのが、たくさんの人を集めて行う「ランダム化比較試験」です。 これは多くの人を集めて、ワクチンを接種するグループと、プラセボ(偽薬)と呼ばれるただの生理食塩水を接種するグループにランダムに振り分け、その後にコロナに感染した人の割合や、体調が悪くなった人の割合を比較するという臨床試験です。 ランダム化比較試験では、ワクチンを接種する人とワクチンを接種しない人をランダムに振り分けているので、元々は2つの群で感染して発症するリスクも、体調不良を起こすリスクも変わらないことがポイントになります。 そうすると、ワクチンやプラセボを打った後に発症した人や、体調不良が起きた人の頻度を比較すると、それがそのままワクチンの効果であると言えるわけです。 ワクチンの承認審査に使われているこの「治験(ちけん)」というのは、まさにこのランダム化比較試験を行っています。