次の大河ドラマの主人公・蔦屋重三郎はこうして成り上がった…今も通用する「薄利だが確実な」儲け方
2025年NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」の主人公は、江戸後期に活躍した版元の蔦屋重三郎(演・横浜流星)。その成功の秘密を調べた川上徹也さんは「蔦重は時代を読む嗅覚に優れ、浮世絵などで話題作を続々と世に出した。それでいて経営者としても堅実な一面を持っていた」という――。 【写真】当時の遊女たちの姿を美しく描いた蔦屋重三郎発行の『青楼美人合姿鏡』(勝川春草画) ※本稿は、川上徹也『江戸のカリスマ商人 儲けのカラクリ』(三笠書房・知的生きかた文庫)の一部を再編集したものです。 ■大河ドラマの主役になった蔦屋重三郎のプロフィール 蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう)(1750 - 1797年) 江戸出版界きってのヒットメーカー。通称「蔦重(つたじゅう)」。遊廓の吉原で生まれ、小さな貸本屋から江戸有数の版元(出版社発行人)に成り上がった。34歳の時、日本橋通油町(現在の中央区日本橋大伝馬町)に進出。「黄表紙」「酒落本」「狂歌絵本」「錦絵」などのヒット作を次々とプロデュースして、時代の寵児となりブランドを確立した。 しかし「寛政の改革」が始まると、風紀取り締まりも厳しくなり、やがて山東京伝(さんとうきょうでん)の酒落本が摘発され、版元の蔦重にも財産の半分を没収という厳罰が下される。 その後、喜多川歌麿(きたがわうたまろ)の大首絵(おおくびえ)の美人画や無名の新人絵師東洲斎写楽(とうしゅうさいしゃらく)の役者絵をプロデュースして復活するが、持病の脚気(かっけ)が悪化し48歳で亡くなった。 現在、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)とその関連会社が運営する、レンタルビデオショップ「TSUTAYA」や「蔦屋書店」とは、創業者の血筋などのつながりはない。 ■蔦重は現代でいうとベストセラーを連発する編集者兼出版社社長 蔦屋重三郎(通称・蔦重)は江戸時代(安永・天明・寛政期)の出版界を代表するヒットメーカーでありカリスマ経営者です。小さな貸本屋から始まり、一代で江戸きっての有名版元(出版社発行人)に成り上がりました。 宣伝上手で時代の流れを読み取る嗅覚に優れ、数々の流行作家とタッグを組み、話題作を続々と世に出しました。それでいて、いわゆるクリエイターであったわけではなく、経営者としても堅実な一面を持っていました。現代でいうとベストセラーを連発する編集者兼出版社社長といったところでしょうか。 人の才能を見抜く力も抜きん出ていて、無名だった喜多川歌麿(「べらぼう」で演じるのは染谷将太)を発掘しデビューさせ江戸きっての人気絵師に仕立て上げました。晩年には謎の天才絵師・東洲斎写楽をプロデュースしたことで話題になります。蔦重の死後に大ブレイクする葛飾北斎(かつしかほくさい)、曲亭馬琴(きょくていばきん)、十返舎一九(じっぺんしゃいっく)なども、無名時代から活動をサポートしていました。 この記事では蔦重の「儲けのカラクリ」の詳細を見ていきましょう。