『クワトロ・フォルマッジ -四人の殺し屋-』 【第1話】
孤高のハードボイルド作家・樋口毅宏によるLEON初の連載小説がスタート! エロス&バイオレンス満載の危険な物語の主人公はクセの強い4人の殺し屋たち。果たして無事に最後までたどり着けるか⁉
樋口毅宏作、LEON初の連載小説がスタート!
コンプライアンスでがんじがらめの社会にあって、あえて良識や常識にたてつく挑発的な小説を発表し続けてきた作家・樋口毅宏が、まさかの『LEON』で新連載小説をスタート! それぞれにクセの強い4人の殺し屋によるエロス&バイオレンス満載の危険な物語は、果たして最後まで無事にたどり着けるか。その第1話を「Web LEON」で特別公開します!
第1話 「殺しは選ばれし者による究極の仕事」
それはありがたいね! 天国なんて地獄みたいなところだろうよ。 後悔した罪人ばっかしだろう、 あそこにいるのは。 淫売女とか、淫売宿の亭主とか、 政治家とか、口先だけ永遠だの神様だの言って そこでひともうけしようって 連中ばっかしだろう。 あたしの帽子はどこ? ── 『蜜の味』より。
■ 一人目の殺し屋:錐縞(きりしま)ヒロシ(48)
殺しは選ばれし者による究極の仕事。俺は親父にそう教わってきた。シリアルキラーとは違う。趣味や嗜好ではなく、プライドを持って仕事として殺しを請け負っている。 初めての殺しは14歳のときだった。 俺の銃で人が倒れても、心は動かなかった。無表情の俺に親父は言った。 「おまえ、スジがいいな」 褒められても頬を緩めることはなかった。 以来、この仕事を続けて30年になる。ジムに通い、オリンピアンのように体を鍛え、そのときに備える。依頼があれば外交官のように世界を駆け巡り、アーティストのように標的を仕留める。 90年代以降、世界に知られる暗殺はほとんど俺の手によるものだ。 中国財界の黒幕を南仏の孤島にバカンス中、愛人とベッドでお楽しみのところを撃った。ギニアビサウの反政府軍リーダーを、アジトの要塞に潜入してマシンガンで部隊ごと一掃。巨万の富を築いた福音派伝道師を百エーカーある庭から忍び込み、屋敷ごと爆破したこともある。 2013年に世界的国際環境NGOの元メンバーで、反捕鯨団体として有名な「Hd」の設立者、Hisazumi代表を殺害したのも俺だ。俺は鯨を捕ることに賛成も反対もない。仕事だから殺ったまでだ。 オフには戦場を忘れて、大統領のように遊ぶ。複数の女を抱く。 「……らめえ」 可愛い声で泣く女は、疲れた魂を癒やす。男の宝物だ。 殺しというと『ゴルゴ13』のイメージが強いからか、遠くの場所からライフル銃で狙撃するものと思われている。実際の殺し方は様々だが、仕事のときは一流のスーツ、ブリオーニのス・ミズーラ、ジョンロブのCity Ⅱ。それが俺の流儀。 標的に狙いを定めて、引き金を引くとき、俺は世界の中心に立つ。