男性のDV被害、相談しづらい現実 47都道府県調査が示す男女格差
19日は「国際男性デー」。配偶者からの暴力(DV)を受けた経験がある男性は、5人に1人超の割合にのぼる。だが都道府県が設置するDV関連の相談窓口への相談件数は女性が約6万件なのに対し、男性は年間約2100件と、女性の約30分の1に過ぎないことが朝日新聞の調査でわかった。男性が被害を相談しにくい現状について、専門家は「男女それぞれの状況に対応した施策が必要」と指摘している。 【画像】DV妻が置いたムカデの死骸 「男なら我慢」義母に言われ耐えた結婚 朝日新聞は10月中~下旬、47都道府県にアンケートを行い、都道府県が設置する相談機関の体制について質問、すべてから回答を得た。 2023年度に相談を受けたのべ件数は、男性が計2143件、女性が計6万358件だった。 相談を受ける曜日や時間が男女でまったく同じ自治体は31あったが、それ以外の自治体は女性に比べて受付時間が短かったり、曜日が限定されたりしていた。また、対面の相談は受け付けず、電話やオンラインでしか相談を受け付けていない自治体は11あった。 また一時避難先として、都道府県が設置している公的シェルターは42の自治体では女性専用だった。男性向けに設置していない理由については「居室部分が男女で分離できない構造となっているため」「ニーズを把握できていない」などの理由を挙げた。 民間団体に委託するなどの形で、男性も避難できるシェルターを確保している自治体は20に過ぎなかった。 内閣府の「男女間における暴力に関する調査」によると、これまで配偶者から暴力の被害を受けたことがあると回答した男性は22%、女性は27・5%と、そこまで差は開いていない。 「男性学」を研究している伊藤公雄・京大名誉教授(ジェンダー社会学)は「『DV被害に遭うのは女性』という認識を起点として制度の構築が始まり、男性側の視点は抜け落ちてきた。これは男女で支援のパイを取り合う単純な問題ではなく、男女それぞれの状況に応じた施策が必要」と話す。(山本悠理、編集委員・岡崎明子)
朝日新聞社